持分あり医療法人の買収とは?クリニック経営者が知るべき手続き・リスク・対策ガイド
クリニック開業・経営
2025/6/12
2025/6/19

この記事の監修

行政書士法人RCJ法務総研 代表 / 行政書士
株式会社リアルコンテンツジャパン(経済産業省認定経営革新等支援機関) 代表取締役
古川 晃
医療許認可の専門家として17年、医療法人設立・分院開設・合併・解散・一般社団法人による診療所開設など医療許認可1500件以上 クリニック様の助成金・補助金・融資などの資金調達100億円以上の支援実績
近年、医療業界では事業承継やM&Aが活発化しており、「持分あり医療法人の買収」に関心を寄せるクリニック経営者が増えています。
新規開業よりも初期コストや許認可のハードルが低い場合があったり、既存の患者基盤や従業員を引き継げる点などが主な理由です。
しかし、「持分あり」の医療法人には独自のリスクや法的課題があり、適切な手続きを踏まなければ、後のトラブルや行政処分の対象となる恐れもあります。
この記事では、医療法人買収の基礎からリスク対策、医療分野に詳しい行政書士に依頼すべきポイントまで徹底解説します。
第1章:持分あり医療法人とは?基礎知識と背景
■ 持分あり医療法人とは?
「持分あり」とは、出資者が医療法人の財産に対して持分権を持つ法人形態を指します。
これは平成19年3月31日以前に設立された医療法人に多く見られ、今となっては新たに設立することができません。
それも既にある法人格を買収したいと思う人が多い理由の一つです。
■ 「持分なし医療法人」との違い
比較項目 | 持分あり医療法人 | 持分なし医療法人 |
設立時期 | 原則として2007年3月以前 | 2007年4月以降 |
持分の譲渡 | 原則として自由(定款による) | 持分制度なし |
解散時の残余財産 | 出資者に分配される可能性あり | 国庫等に寄付 |
この「持分」の存在が、買収時や相続時に法的・税務的な問題を引き起こす原因となるため、特に注意が必要であり、安易な買収は危険です。
第2章:医療法人の買収で起きやすいトラブルとリスク
■ よくあるトラブル事例
- 意見がまとまらず社員総会の承認が得られない
- 名義変更がスムーズに進まず診療報酬請求に支障が出る
- 出資持分の評価額が高額で売買契約が難航
- 法人登記や診療所開設届出が正しく処理されず、保健所からの指導対象に
- 過去に行政罰を受けていたり、行政手続きに漏れがあったり、患者からの訴訟や、目に見えない負債やリスクが残っていたりすることがある。
■ 特に注意したいリスク
- 持分譲渡時の贈与税等の発生や、譲受後の法人税や負債などの支払い
- 買収後の法人運営におけるコンプライアンス違反
- 旧理事長と新理事長とのトラブル(契約未整備など)
- 過去の行政手続きの漏れなど
こうしたリスクを見逃すと、最悪の場合、医療法人の業務停止や指定取消処分に至る可能性もあります。
第3章:買収の流れと必要な行政手続き
■ 基本的な医療法人買収の流れ
- 【事前調査】医療法人の財務・法務デューデリジェンス
- 【意向確認】出資持分の譲渡意思確認、理事会・社員総会の承認
- 【契約締結】出資持分譲渡契約書、役員変更契約書等の締結、できる限りのリスクヘッジを検討
- 【行政手続】役員変更届、診療所管理者変更届、登記変更 等
- 【承継完了】各種手続
■ クリニック経営に関わる許認可手続き一覧
手続き名 | 管轄機関 | 提出期限・注意点 |
理事長変更届 | 都道府県 | 理事長交代から10日以内 |
診療所管理者変更届 | 保健所 | 変更から10日以内 |
法人登記変更 | 法務局 | 役員変更後2週間以内 |
保険医療機関指定の変更届 | 地方厚生局 | 管理者変更を伴う場合など |
行政手続きの不備や漏れがあると診療報酬が請求できないリスクがあるため、確実な処理が求められます。
第4章:買収前に行政書士を伴走させるべき理由
自分でやると危険な理由
- 書類作成・提出の形式や期限が厳密に決まっている
- 自治体ごとに対応が異なる(例:東京都と神奈川県では申請様式が異なる)
- 複数の官公庁にまたがるため、並行処理に高度な実務力が必要
- 法務局・保健所・厚生局など調整ミスが大きな遅延に
行政書士の専門的支援が不可欠なシーン
- 出資持分譲渡契約書や合意書のチェック・作成支援
- 診療所開設届・管理者変更届など複雑な行政手続
- M&Aスキームの構築支援(MS法人との連携など)
- 名義変更後の行政手続
第5章:医療に詳しい行政書士を味方につけないと起こり得る重大リスク
全ての行政書士が医療に詳しいわけではなく、特に医療は専門性が高く複雑です。経験豊富な専門家を側に置きましょう。
- 書類不備により開設許可が得られない → 診療できない
- 名義が旧代表のまま → 診療報酬が請求できずキャッシュフロー停止
- MS法人契約が不備で税務署から否認 → 重加算税リスク(税理士と連携)
- 法人解散時に持分返還トラブル → 相続争いへ発展
こうした問題を未然に防ぐには、医療法人買収に強い行政書士と最初からタッグを組むことが最短ルートです。
第6章:買収の判断に迷ったら医療専門行政書士へ早期相談を
医療法人の買収、特に「持分あり医療法人」では、経営判断だけでなく法律・税務・許認可の専門知識が求められます。
失敗すれば、クリニック経営に重大なダメージを与えかねません。
少しでも迷ったり、買収話が持ち込まれた際には、まず医療専門行政書士に相談し、医療に詳しい税理士や弁護士等とのブレーンを身近に置いておくことをおすすめします。
まとめ:成功する買収の鍵は「伴走パートナー」にあり
持分あり医療法人の買収は、適切に進めれば最短で収益化が可能なチャンスでもあります。
しかし、一歩間違えれば訴訟や行政指導といったリスクも孕みます。
そのリスクを最小化し、買収を成功に導くためには、
✅ 医療法人に強い行政書士
✅ 手続きと許認可の実務経験が豊富な専門家
をパートナーにすることが不可欠です。
今すぐご相談ください!
「この法人、買って大丈夫?」
「社員総会の承認が必要かどうか確認したい」
「実際の行政手続はいつ何をやるの?」
「どんなリスクがあるの?」
そんな不安がある方は、お早めに当事務所までお問い合わせください。
※本記事は法令や制度の一般的な解説を目的としており、具体的な案件については専門家への個別相談をおすすめします。
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