【医療法人設立の教科書】年収1,800万円を超えたら検討すべき「法人化」のメリットと、失敗しない設立認可スケジュールの全貌

クリニック開業・経営

2026/1/23 2026/1/23

この記事の監修

古川 晃

行政書士法人RCJ法務総研 代表 / 行政書士 
株式会社リアルコンテンツジャパン(経済産業省認定経営革新等支援機関) 代表取締役

古川 晃

医療許認可の専門家として17年、医療法人設立・分院開設・合併・解散・一般社団法人による診療所開設など医療許認可1500件以上 クリニック様の助成金・補助金・融資などの資金調達100億円以上の支援実績

日々の診療、誠にお疲れ様です。

クリニックの経営が軌道に乗り、患者様が増えることは喜ばしい反面、確定申告の時期になると思うようにならないのが「税金」の悩みではないでしょうか。

はたから見れば嬉しい悩みかもしれませんが、実際にその当事者になると笑い話ではなくなります。

「一生懸命働いているのに、半分近く税金で持っていかれる」

「設備投資をしたいが、手元のキャッシュが残らない」

「かなり売り上げたはずなのに、全然お金がない」

日本の所得税は「超過累進課税」であり、個人の所得が1,800万円を超えると、住民税と合わせて約55%の税率が課されます。

さらに、個人事業主のままでは、事業承継や分院展開にも限界があります。

そこで検討の遡上に上がるのが「医療法人化」です。

その昔は、医師が3人以上いないと法人化できないなど制限がありましたが、今は医師1人で設立が可能となりました(理事、監事などの役員は必要だが医師免許は不要)。

しかし、医療法人の設立は、株式会社を作るのとは訳が違います。

まず、都道府県の「認可」そして、各保健所の「許可」極めて複雑な「行政手続き」と「審査」をクリアしなければなりません。

個人開設の時の「開設届」とはわけが違います。

本記事では、医療法人設立のサポート実績豊富な行政書士が、法人化のメリット・デメリット、そして「失敗しないための設立スケジュール」について徹底解説します。

目次[非表示]

ズバリ、医療法人化すべき「3つのタイミング」と判断基準

いつ法人化すべきか。その基準は明確です。

以下のいずれかに当てはまる場合、先生は今すぐにでも検討を始めるべきステージにいらっしゃいます。

① 所得税・住民税の合計が「法人税率」を超えた時

一般的に、院長先生の個人所得(利益)が1,800万円を超えたあたりが分岐点と言われます。

個人の最高税率(55%)に対し、医療法人にかかる法人税の実効税率は約20〜30%程度です。

この税率差を利用することで、手元に残るキャッシュを確実に増やすことができます。

② 手取り(可処分所得)を増やし、老後資金を積み立てたい時

個人事業では「自分への給与」という概念がありませんが、法人化すれば院長先生は「役員」となり、「役員報酬」を受け取れます。

これにより「給与所得控除」が適用され、税金の計算上の所得を圧縮できます。

また、最大級のメリットが「退職金」です。

将来引退する際、法人から高額な退職金を受け取ることができ、これは税務上非常に優遇されています(退職所得控除)。

③ 分院展開や介護事業、メディカルフィットネスなど(附帯業務)への参入を考えた時

「分院を出したい」「サ高住や訪問看護ステーションを併設したい」

これらを行うには、組織としての永続性と管理体制が求められるため、事実上、医療法人格が必須となります。

経営を多角化するなら、法人化は避けて通れない道です。

ただし、分院ではなく、介護事業や歯科技工所など株式会社でも行える事業については、無理に医療法人で行わなくても、別で株式会社を設立してそちらで事業展開することもできます。

目的や状況に合わせて、検討していきましょう。

【メリット・デメリット】法人化は「魔法の杖」ではない。コストも直視せよ

良いこと尽くめに思える法人化ですが、そうは言ってもやはり何事にもデメリット(コスト増)も存在します。

ここを見過ごさずにシミュレーションすることが重要です。

デメリットの筆頭:社会保険(厚生年金)の強制加入

個人クリニック(従業員5人未満)では、医師国保と国民年金での運用が可能でしたが、医療法人化すると、役員・常勤職員全員の「社会保険(健康保険・厚生年金)」への加入が義務付けられます。

クリニック側が保険料の半分を負担するため、人件費コストは確実に上がります。

もちろん、すでに社会保険に加入している場合は法人に切り替えるだけですので問題にはなりません。

行政手続コスト

毎年の事業報告・経営状況報告・資産変更登記・2年に一度の役員重任登記

医療法人にはこれらが義務付けられ、個人開設の時にはなかったことが生じます。

ただ、これも基本的には医療専門の行政書士が対応しますし、登記についても司法書士が代行しますので、ブレーンを近くに置いておけば、工数が大きく増えるものではありません。

ただ、代行費用が毎年かかります。

事業報告・経営状況報告・資産変更登記 毎年5万円から15万円程度(内容や規模による) 

役員の重任登記 (2年に一度)5万円以内程度

税務コスト

個人から法人になると税理士さんへの報酬が上がることが多い

税理士さんにはよりますが、基本的には報酬はあがります。

個人の税務申告より法人の税務申告の方が複雑で工数が多いからです。

さらに、法人化にあたっては医療経営に詳しい税理士さんとを側におくことをお勧めします。

個人の時は医療法を考えず税法だけで税務申告をしていたケースが多いですが、医療法人は毎年の事業報告や、定款変更ごとに審査があり決算書関係を提出しますから、医療法に反する税務申告をしていると都道府県にそれが発覚します。

これが危険で、コンプライアンス違反があると改善指導が入ります。

個人でないとできないことや、医療法人にはできないこともある

小規模共済に加入していた場合、医療法人として継続することはできないので、ご注意を。

解約をしたり、診療所経営とは別で個人事業を継続するのであればその事業で加入するなどはあり得ますが、事前に共済の窓口に相談しましょう。

また、個人事業であれば申請できた補助金も、医療法人は対象外になるものも多くあります。

さらに、医療法人はあくまで医療経営を行うための法人ですから、個人事業なら行えた飲食店経営であったり、不動産経営などの事業は行うことはできません。個人事業として行うか、別会社を作って行うなどの工夫が必要となります。

それに伴い、経費も医療経営に関することしか原則として使えません。

当然法人の経費はその法人の事業に必要な費用だけですので、医療経営に関するものしか使えません。

税務の話は少し触れましたが、医療法人化後は、税務署だけでなく、都道府県の監督も入りますから、税法だけでなく、医療法の視点でも会計をみる必要があります。

税理士さんに税務上OKと言われても、医療法上はNGとなると指導の対象となりますし、改善しないと分院開設の認可がおりないなど致命的な打撃を受けるケースも多くあります。

「負担増」vs「節税効果」の損益分岐点

しかし、ご安心ください。

もし、現在個人の所得税が高いという方は、高ければ高いほど、社会保険料や行政手続きの負担増を差し引いても、前述の「税率差」や「給与所得控除」「家族への給与分散」などのメリットが上回るケースがほとんどです。

重要なのは、「トータルでいくら手元に残るか」を、顧問税理士等と連携して精密にシミュレーションすることです。

また、医療経営に詳しい税理士、行政書士などのブレーンを身近に置いておけば、ほとんどのデメリットは潰すこともできます。

その分コストが増えることもありますが、節税効果の方が上回ることが多いです。

普通の会社とはここが違う!医療法人設立の「厳格なスケジュール」

「会社なんて数週間で作れるだろう」と思っていると、痛い目を見ます。

法務局に行くだけでは作れない。「都道府県知事の認可」が必要

株式会社は、公証役場で定款認証を受け、法務局で登記すれば設立できます(約2週間)。

しかし、医療法人は「都道府県知事の認可」を受けなければ設立できません。

この「認可」をもらうための審査が、非常に厳格で時間がかかります。

申請チャンスは「年2回(または3回)」のみ(都道府県ごとにスケジュールが違う)

多くの都道府県では、医療法人設立認可申請の受付期間を「年2回(例:3月と8月)」などに限定しています。

もし書類の不備でこのタイミングを逃すと、次の受付は半年後になります。

その半年間、先生は「高い税金」を払い続けなければなりません。数ヶ月の遅れが、数百万円の損失につながるのです。

準備開始から設立まで「およそ約10ヶ月」

  • 事前準備(2〜3ヶ月): 定款案作成、社員・役員の選定、印鑑証明等の収集
  • 仮申請・本申請(2〜3ヶ月): 行政による審査、医療審議会への諮問
  • 認可書交付・登記(1ヶ月): やっと法人が誕生
  • 開設許可・保険指定(1〜2ヶ月): 保健所と厚生局の手続き

トータルで1年近くかかります。「来月から法人にしたい」というのは、物理的に不可能なのです。

これは、分院開設も同様で、すぐに開設ができるわけではなく、同じような手続きが必要となることを覚えておきましょう。

しばしば、「とりあえず分院に良さそうなテナントを契約したいんだけど」というご相談があります。

この話をすると、「もう工事業者決めて採用も始めてるからやばいんだけど。なんとかして」となります。

なんとかしたい気持ちはもちろん同じでどうにかしたいのですが、行政側のスケジュールがあるので、気合いとか頑張るとかではどうにもならないことになることを忘れないようにしましょう。

「顧問税理士にお願いしている」が一番危ない?医療法務の落とし穴

「手続きは顧問税理士さんに任せているから大丈夫」

そうおっしゃる先生も多いですが、ここに大きな落とし穴があります。

税理士さんは「数字のプロ」だが「許認可のプロ」ではない

税理士の先生は、節税シミュレーションや決算においては最強のパートナーです。

しかし、医療法人設立に必要な医療法に基づく定款作成」や「都道府県庁との行政折衝」は、税理士の専門外です。

そもそも、行政書士資格を持たない税理士が、報酬を得て申請書を作成代理することは法律で禁止されています。

また、医療法と税法は全く別の法律です。

税理士さんは税法のプロです。中には、医療経営実務に詳しい税理士さんもいらっしゃいますが、全く経験がない税理士さんもいらっしゃいます。

任せっきりは大変危険です。事業主である先生が主体的になって医療に詳しい行政書士と進める必要があります。

実際にあったトラブル事例

「顧問税理士さん主導で進めていたが、要件を理解しておらず、事前審査で『これでは認可できません』と突き返されてしまった。

結果、申請を1回見送ることになり、法人化が半年遅れ、その年の節税対策が全て無駄になった」

「認可のことを知らず、期日を過ぎてしまった」

「税務上は問題ないが、医療法に反する不適切な会計処理があって、難航した」

このようなご相談が、弊所にも後を絶ちません。

医療法人設立は、税務と法務(許認可)の両輪が噛み合って初めて成功するプロジェクトなのです。

弊所では、医療経営に強い税理士さんや各種医療特化型の専門家のご紹介も可能です。

設立後の「空白期間」に注意!保険診療がストップするリスク

認可が下りて登記が完了しても、まだ終わりではありません。

次は「許可」がないと営業開始(診療開始)することはできません。

実は、最も神経を使うのが設立直後の「切り替え手続き」です。

  • 個人診療所の廃止届(保健所)
  • 法人診療所の開設許可申請・届出(保健所)
  • 保険医療機関指定申請(関東信越厚生局など)

これらは、「4月1日設立」などのXデーに合わせて、一斉に行う必要があります。

厚生局への遡及(そきゅう)申請に失敗すると「1ヶ月保険診療不可」に

通常、法人成りの場合は「遡及申請」を行うことで、診療を止めることなく保険請求を継続できます。

しかし、厚生局への申請期限(毎月10日必着など)に1日でも遅れたり、書類に不備があったりすると、「来月は保険請求できません(全額自費)」という事態に陥ります。

  • 「認可」は取れたが「許可」が取れていない。
  • 「開設」はできたが、「保険医療機関指定」が取れていない
  • 「保険請求」ができない。

そんな悪夢を避けるために、3つの役所(都道府県・保健所・厚生局)のスケジュールを完璧に管理するプロジェクトマネージャーとなる医療専門の行政書士が必要なのです。

【FAQ】医療法人設立に関するよくある質問

医療法人の設立に関するよくある質問と回答をご紹介します。

Q1. 設立費用はいくらかかりますか?

行政書士報酬+実費がかかります。

行政書士への報酬相場は、地域や審査の難易度によりますが、設立認可から保健所・厚生局の手続きまでトータルで100万円程度が一般的です。

もちろん株式会社設立とは工数が全然違いますし専門知識を要するので高額ですが、半年間の業務量と専門性を考慮すると、決して高くはありません(節税効果ですぐに回収できるケースが大半です)。

Q2. 「持分なし医療法人」しか作れないって本当ですか?

はい、現在は原則「持分なし」です。

平成19年の医療法改正以降、新設される医療法人は「持分なし社団医療法人(出資持分の定めのない医療法人)」となります。

解散時の残余財産が国等に帰属する形ですが、基金拠出型というスキームを使うことで、拠出した資金の返還を受ける設計は可能です。

Q3. 一人医師でも法人化できますか?(一人医師医療法人)

可能です。

「理事3人、監事1人」が必要だったのは昔の話です。

現在は、都道府県知事の認可を受ければ、理事1人(院長のみ)または理事2人などの体制でも設立が可能です(一人医師医療法人)。

ただし、管理体制の観点から、親族等を理事や監事に据えることが推奨される場合もあります。

まとめ:法人化は「一大プロジェクト」。確かなパートナーと共に成功を

医療法人化は、先生のクリニックにとって「第2の創業」とも言える大きな転換点です。

成功すれば、税負担が軽くなり、経営基盤が安定し、将来への安心が得られます。

しかし、その入り口である「設立手続き」でつまずくと、時間とコストを浪費するだけでなく、精神的にも大きな負担となります。

「自分の年収で法人化すべきか相談したい」

「次の申請スケジュールに間に合わせたい」

「税理士と連携して動いてくれる行政書士を探している」

そのようにお考えの先生は、ぜひ医療法務専門の行政書士にご相談ください。

先生は日々の診療に専念してください。

面倒な手続きと行政との折衝は、私たちが全て引き受けます。

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医療許認可の専門家として17年。医療許認可1,500件以上の実績。
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