【医療法人の名称ルール】「〇〇センター」は使用不可?却下されるNGネーミングと、行政指導を回避する鉄則

クリニック開業・経営

2025/12/26 2025/12/26

この記事の監修

古川 晃

行政書士法人RCJ法務総研 代表 / 行政書士 
株式会社リアルコンテンツジャパン(経済産業省認定経営革新等支援機関) 代表取締役

古川 晃

医療許認可の専門家として17年、医療法人設立・分院開設・合併・解散・一般社団法人による診療所開設など医療許認可1500件以上 クリニック様の助成金・補助金・融資などの資金調達100億円以上の支援実績

「新しい医療法人の名前は、地域で一番愛されるクリニックにしたいから『千葉No.1クリニック』にしよう」

「最先端の医療を提供したいから、『東京先進医療センター』はどうだろう」

「ドラクエが好きだから傷を癒す『医療法人ベホマ』はどうだ」

開業や法人化にあたり、クリニックのコンセプトを体現する「名前」を考える時間は、先生にとって最も楽しいひとときかもしれません。

ロゴデザインを考えたり、看板のフォントを選んだり、夢が膨らみます。

私も20年以上、クリニック様の許認可のご支援をさせていただき、たくさんの案をお聞かせいただきました。

しかし、ここで行政書士として、「待った!」をかけさせていただきます。

そのお気に入りの名前、そのまま申請すると都道府県から「却下」される可能性が極めて高いです。

さらに、事前チェックをせずに看板を作ってしまったりすると作り直しになったりします。

株式会社であれば、ユニークな名前やインパクトのある名前も比較的自由に登記できます。

しかし、医療法人は「非営利性」や「公益性」が求められる特殊な法人です。

そのため、名称に関しても医療法や通知に基づく極めて厳格な規制が存在します。

もし、事前の確認不足でNG判定が出たらどうなるでしょうか?

すでに発注してしまった看板、印刷済みの診察券、作成したロゴデータ……これら全てが「廃棄処分」となり、数十万〜数百万円の損失が発生します。

本記事では、意外と知られていない「医療法人の名称ルール」について、絶対に避けるべきNGワードや、トラブルになりがちなポイントを徹底解説します。

基本中の基本!医療法人の名称構成のルール

まずは基本的なルールを確認しましょう。

「医療法人」の文字は必須

医療法人の名称には、必ず「医療法人」という文字を含めなければなりません。

一般的には「医療法人(社団/財団) 〇〇会」という形が多く見られます。

※「社団」「財団」の文字を入れるかどうかは、定款の定めによりますが、入れるのが一般的ですが、大阪など入れない法人が多い地域というのも存在します。もちろん、大阪も「社団」の文字を入れることはできますし、入れている法人さんもたくさんあります。

昔はご存じの漢字3文字「◯◯会」が慣習的に多かったのですが、これも必須ではありません。

基本的には自由に決めることができ、最近はアルファベットの法人名も増えてきましたね。

「法人名」と「診療所名」の違いを理解する

ここが混乱しやすいポイントです。

  • 法人名: 医療法人社団 〇〇会(法務局に登記される会社名のようなもの)
  • 開設する診療所の名称: 〇〇クリニック(看板に掲げる病院名)

これらは一致していても(例:医療法人社団ABCクリニック)、異なっていても(例:法人名=医療法人社団愛和会、診療所名=スマイルクリニック)構いません。

ただし、どちらの名称にも、これから解説する規制が適用されます。

【完全解説】絶対に却下される「NGワード」と禁止表現リスト

都道府県の審査担当者は、以下の基準に基づいて名称を厳しくチェックします。

一つでも該当すれば、認可は下りません。

① 誇大広告・No.1表示(「日本一」「最高」「ベスト」)

医療において「絶対」や「一番」はあり得ないという考え方から、優良誤認を招く表現は禁止されています。

NG例

日本一クリニック、最高医療法人、ベスト治療院、パーフェクト歯科、など。

優良誤認表示などと言われたりもしますが、良く見せようとするするのは患者さんに不利益があるからNGというような考え方です。

この解釈は診療所のある地域を管轄する保健所ごとに判断されるので、その地域ごとに異なるというのがポイントです。

② 公的機関と誤認させる名称(「公立」「県民」「大学」)

私立の医療法人であるにもかかわらず、公的機関や大学病院の関連施設であるかのように装う名称は使えません。

NG例

東京公立クリニック、県民健康センター、〇〇大学連携クリニック(※実際に大学と密接な連携があり、大学側の正式な承諾書がある場合は認められることもあります)

これも、公的機関だと誤認させた患者さんの不利益になるから禁止という趣旨です。

③ 実態と合わない名称(「〇〇病院」「〇〇研究所」)

  • 「病院」: 入院ベッド数が20床以上なければ「病院」とは名乗れません。無床診療所が「〇〇病院」と名乗るのは医療法違反です。
  • 「研究所」: 実際に研究施設や研究実績、体制がないのに、響きが良いからといって「研究所」をつけることは認められません。

④ 品位を損なう名称・公序良俗違反

わいせつな言葉や、差別的な言葉、暴力的な言葉はもちろんNGです。

また、医療の品位を損なうようなふざけた名称も指導の対象となります。

冒頭のゲームや漫画などで使われている名称なども知的財産権の侵害となるので、NGということになります。

また、すでに存在している診療所の名称も、患者さんが誤認をする可能性もありますし元々の名称を使っている診療所に不利益を与えることもあることから、不正競争防止法の問題からNGとされます。

「〇〇クリニックセンター」はなぜダメなのか?厳格な「センター」規制

先生方から最も多く相談を受けるのが、この「センター(Center)」という言葉です。

「インプラントセンター」「腰痛治療センター」など、専門性をアピールするために使いたいという要望は非常に多いです。

公的な信頼性もありそうな感じがします。

しかし、原則として診療所の名称に「センター」を用いることは認められていません。

なぜダメなのか?

「センター」という名称は、地域の核心的な医療機関や、高度な機能を持つ施設(救命救急センターなど)に使われるべきものであり、一般的な診療所が安易に使用すると、患者が「ここは大規模な拠点病院だ」と勘違いしてしまうからです。

使用が認められる例外

ただし、以下の条件を満たす場合は例外的に認められることがあります(自治体により基準が異なります)。

  • 「休日夜間急患センター」(医師会等が運営する場合)
  • 「総合周産期母子医療センター」(国の指定を受けた場合)
  • 「健診センター」(診療部門とは別に、健診専用のフロアや体制が確立されている場合)

単に「その治療が得意だから」という理由だけで、屋号に「センター」をつけることは、ほぼ100%行政指導の対象になるとお考えください。

アルファベット(英語)は使える?都道府県で異なる「ローカルルール」の罠

「グローバルなイメージにしたいので『Medical Corporation ABC』にしたい」

「『XYZ Clinic』という名称は可能か?」

結論から申し上げますと、「法務局の登記(商業登記規則)」上は、アルファベットの使用は可能です。

しかし、「医療法上の認可(都道府県)」においては、判断が分かれます。

都道府県の温度差

  • A県の場合: 「登記できるならOK」とあっさり認可される。
  • B県の場合: 「高齢者の患者さんが読めないため、日本語表記にしてください」と指導される。
  • C県の場合: 「アルファベットでもいいが、必ずフリガナを併記すること」と条件が付く。

このように、場所によってルールが異なります。

「東京の知り合いの先生は英語名だったから、千葉でも大丈夫だろう」という自己判断は危険です。

必ず管轄の都道府県担当部署への事前確認が必要です。基本的には、患者さんの利益という視点で考えられるということです。

名前を変えたい!「名称変更」の手続きとコスト

すでに医療法人化されている先生で、「イメージを一新するために法人名を変えたい」という場合の手続きについても触れておきます。

名称変更は、単なる「届出」ではありません。「定款変更認可申請」という、設立時と同様の重い手続きが必要です。

定款変更をせずに、保健所の方に診療名称変更だけしてしまっているというケースもしばしばあります。発覚すると当然行政指導の対象です。

変更のステップ

  1. 社員総会での決議
  2. 都道府県知事への定款変更認可申請
  3. 法務局での名称変更登記
  4. 保健所への許可事項変更届
  5. 厚生局への届出
  6. 税務署、銀行、社会保険事務所等の名義変更

影響範囲は甚大

手続きにかかる期間(数ヶ月)だけでなく、以下のコストも発生します。

  • 看板の書き換え
  • 診察券、封筒、レターヘッドの刷り直し
  • ホームページの修正
  • 法人実印(銀行印)の作り直し
  • 銀行口座の名義変更(一時的に取引が止まる可能性も)

「気分転換」で変えるには、あまりにも労力がかかります。

だからこそ、最初のネーミング(設立時)がいかに重要か、お分かりいただけるかと思います。

ネーミングこそ行政書士へ相談を。「商標」と「許認可」のダブルチェック

医療法人の名称を決める際、頼りになるのが医療専門の行政書士です。

都道府県ごとの「事前事後」の温度感を知るプロ

私たちは、日頃から行政窓口と折衝しているため、「この県はこのキーワードに厳しい」「この表現ならギリギリ通る」という「肌感覚(相場観)」を持っています。

ネットで検索しても出てこない、最新のローカルルールに基づいたアドバイスが可能です。

近隣トラブル(不正競争防止法)のリスク管理

行政の認可とは別に、「近隣に同じような名前のクリニックがないか」も重要です。

もし近くに「あさひクリニック」があるのに、新たに「あさひ内科クリニック」を作れば、患者さんの誤認を招き、最悪の場合、先方から訴訟を起こされるリスク(不正競争防止法違反)もあります。

私たちは、近隣の医療機関の調査も行い、トラブルのリスクが低い名称をご提案します。

(※商標権の厳密な調査・出願が必要な場合は、提携する弁理士と連携してサポートします)

【FAQ】医療法人の名称に関するよくある質問

名称に関して、よくいただく質問をまとめました。

Q1. 理事長(自分)の名前を入れることはできますか?

はい、可能です。

「医療法人社団 鈴木会」のように、理事長等の氏名を名称に用いることは一般的であり、全く問題ありません。

事業承継の際も、創業者の名前として残すケースが多いです。ただ、すでに存在している場合もあるので事前に確認をしましょう。

Q2. 好きなキャラクターや有名人の名前は使えますか?

原則としてNG、あるいは極めて高リスクです。

まず、著名なキャラクター名などは他社の商標権を侵害する恐れがあります。

また、実在の有名人の名前を勝手に使うことは、パブリシティ権の侵害になるだけでなく、医療法上の品位保持義務違反に問われる可能性があります。ゲーム等も同様です。

まとめ:名前は法人の「顔」。一生モノだからこそ、盤石な確認を

医療法人の名称は、一度決めたら何十年と使い続ける、法人の「顔」であり「アイデンティティ」です。

しかし、そこには医療法という法律の壁と、都道府県ごとの複雑な運用ルールが存在します。

素晴らしい想いもそのまま使えるかは分かりません。

「自分の考えた名前が使えるか知りたい」

「名称変更を考えているが、どれくらい大変かシミュレーションしたい」

「センターという言葉を使いたいが、代わりの案はないか」

そのようにお考えの先生は、ロゴや看板を発注する前に、まずは一度ご相談ください。

当事務所では、「リーガルチェック(法的確認)」と「ブランディング」の両立を目指し、スムーズな認可申請をサポートいたします。

 

その名前、本当に大丈夫?

医療法人の設立・名称変更のご相談は、医療法務専門の行政書士法人RCJ法務総研へ。

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