医療法人の法人格を買収するという選択肢:クリニック経営者が知っておくべき手続きとリスク

クリニック開業・経営

2025/6/19 2025/6/19

この記事の監修

古川 晃

行政書士法人RCJ法務総研 代表 / 行政書士 
株式会社リアルコンテンツジャパン(経済産業省認定経営革新等支援機関) 代表取締役

古川 晃

医療許認可の専門家として17年、医療法人設立・分院開設・合併・解散・一般社団法人による診療所開設など医療許認可1500件以上 クリニック様の助成金・補助金・融資などの資金調達100億円以上の支援実績

近年、医療法人の設立に伴う行政手続きの煩雑さや、地域医療の継承問題から、「既存の医療法人の法人格を買収する」という方法を検討する場合もあります。

特に、すでに法人格を持つ医療法人を承継・活用することで、新たに開設するよりもスピーディに事業展開が可能となることもある点が、多くのクリニック経営者の関心を集めています。

本記事では、医療法人の法人格買収に関する手続きや法的留意点、医療専門の行政書士など専門家を活用する重要性、そして買収のメリット・デメリットを解説します。

医療法人の法人格の買収とは?その仕組みと基本理解

「医療法人の買収」というと、「クリニックの買収」や「M&A」と混同されがちですが、ここで扱うのは医療法人という法人格そのものを取得して活用することです。

法人格の買収とは何か?

医療法人は、一定の条件のもとで都道府県知事の認可を受けて設立される「非営利法人」です。

原則として、設立手続きは煩雑で時間もかかります。しかし、すでに認可を受けて存在している法人を買収すれば、新設に比べて以下のようなメリットがあります。

  • 迅速な事業開始が可能な場合がある
  • 診療所・病院の追加開設にスムーズに移行できる
  • 金融機関・保険者との交渉に有利なケースも

 

ただし、本当にそれが実現できるかはその法人の質や今後の事業計画、資金計画など様々な要素が組み合わさって審査されますので、事前の調査が非常に重要です。

売っている法人ならなんでも良いという話ではありません。

なぜ医療法人の法人格を買収するのか?メリットと活用ケース

メリット①:新規設立よりも手続きが早い事がある

医療法人の新規設立には、都道府県への「設立認可申請」や事業計画、役員構成の整備などが必要で、1年近い期間が必要です。

そもそも、個人診療所の経営実績がないと認められない都道府県がほとんどです。

一方で、法人格買収では、すでに認可を得ている法人の内部の体制変更や名称変更を通じて既存法人を再編する形で進められるため、時間短縮が可能です。

ただし、なんでも認められるわけではありません。

メリット②:分院展開・再生医療導入に有利

特に、美容医療・自由診療・再生医療といった新規事業展開では、医療法人であること自体が信用力になる場合があります。

法人格を買収することで、分院展開や再生医療等提供計画の届出にもスムーズに行く場合があります。

メリット③:節税や承継対策としても有効

医療法人を用いた税制メリットや、後継者へ法人格を引き継ぐ承継モデルとしても活用可能です。

特に持分なし医療法人の場合、出資金トラブルが生じにくい点もポイントです。

医療法人の買収手続きに必要なステップ

法人格を取得するだけといっても、医療法人は「非営利性」や「公共性」が問われる特殊法人であり多くの行政手続きが伴うため、通常のM&Aとは異なる慎重な手続きが必要です。

ステップ①:対象法人の調査(デューデリジェンス)

まず、買収対象となる医療法人が下記の点を満たしているか確認します。最も重要です。

  • 持分の有無(「持分なし」が一般的に望ましい)
  • 過去の行政処分・指導歴
  • 財務状況・未払い税金・負債
  • 医師・理事構成と経営権の所在

※この段階で、医療専門の行政書士や公認会計士のサポートが必須となります。

ステップ②:理事・社員構成の変更

法人の実質的な支配権を取得するには、理事長・理事の交代や社員の入れ替えなどの登記や行政手続きが必要です。

自治体への手続きを怠ると、医療法違反や認可取り消しのリスクもあります。

ステップ③:名称・定款変更・事業目的の再設定

法人格をそのまま活かしつつ、新たな目的で活動するには、定款や登記上の記載を変更する必要があります。

これにも都道府県知事の「認可」が必要であり、専門的な文言修正と計画書の作成が求められます。

非営利性や永続性の審査をクリアしなくてはいけません。

医療法人買収におけるリスクと注意点

リスク①:過去の法人の「負債」や「違反歴」の継承

法人格は継続するため、買収後に過去の違法行為や行政指導歴が発覚すると、処分対象となったり、新たな認可を得づらかったりする可能性があります。

買収前の調査(デューデリジェンス)を行政書士や専門家と徹底的に行うことが極めて重要です。

リスク②:自治体の審査・不認可の可能性

都道府県によっては、法人格の名義変更や理事構成の変更に非常に厳しい審査を行うケースもあります。

特に、「法人格の売買を目的とした行為」と判断されると認可が下りないこともあります。本来行うべき行政手続きに漏れがあるなども同様です。

リスク③:医療法や医師法に抵触する恐れ

法人格を利用した形だけの医療法人化や、実質的な経営支配が医師でない場合などは、法令違反と見なされるリスクがあります。

これは廃止命令や刑事責任にもつながる重大な違反となり得ます。営利法人が実質支配しているような状況だと認可は得られません。

行政手続き・許認可対応は専門家と進めるべき理由

医療法人の買収における最大の落とし穴は、「行政手続きの不備」による事業停止や認可取消しです。

なぜ医療専門の行政書士が必要なのか?

  • 都道府県との事前協議・調整が不可欠
  • 定款変更や事業目的の策定には専門知識が必須
  • 許認可・変更届出・登記の連携が必要

 

医療分野は専門性が高く、行政書士であれば誰でも対応できるというわけではありません。

医療専門の行政書士は、医療法や医療法人制度の理解に加え、地域の医務課や保健所との折衝経験を持っています。

これにより、想定外のトラブルや許認可の遅延を回避できます。

まとめ:医療法人買収を検討するなら今がチャンス

日本全国で「高齢医師の引退」や「後継者不足」により、休眠状態にある医療法人が増加しています。

適切な調査と専門家のサポートのもとでこれらを活用できれば、競合より早く市場参入し、クリニック経営をスケールアップさせるチャンスにもなり得ます。

買収は戦略、だが法令遵守と専門家活用が不可欠

医療法人の法人格の買収は、資金力と事業戦略を備えた経営者にとっては魅力的な選択肢です。

しかしその一方で、医療法の制約や行政対応の煩雑さを甘く見ると、重大なリスクに発展します。

行政書士など専門家を「パートナー」として活用し、計画段階から伴走してもらうことが、成功への近道です。

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