クリニック開業・経営の資金調達ガイド|融資・補助金・行政手続きのすべて
クリニック開業・経営
2025/5/8
2026/1/23
この記事の監修
行政書士法人RCJ法務総研 代表 / 行政書士
株式会社リアルコンテンツジャパン(経済産業省認定経営革新等支援機関) 代表取締役
古川 晃
医療許認可の専門家として17年、医療法人設立・分院開設・合併・解散・一般社団法人による診療所開設など医療許認可1500件以上 クリニック様の助成金・補助金・融資などの資金調達100億円以上の支援実績
クリニックを開業するには、物件取得、内装工事、医療機器の購入、人材採用、広告宣伝など、多くの費用が必要になります。
これらの資金をいかに効率よく調達するかは、事業の成否を分ける重要なポイントです。
特に最近では、銀行融資だけでなく補助金・助成金の活用、リースや資金協力スキームなど、選択肢が広がっています。
本記事では、クリニック開業や運営における資金調達の方法を網羅的に解説し、あわせて行政手続きや許認可と深く関係する資金調達上の注意点を紹介します。
また、医療経営に明るい行政書士という専門家を早期にパートナーにすることの重要性についても触れていきます。
クリニックの開業・運営にかかる主な費用
まずはクリニック開業・運営にかかる主な費用について解説します。
※地域や規模、業態により大きく異なります。
開業時に必要な初期費用の目安 (抑えめの場合)
| 費目 | 想定金額(目安) |
| 物件取得費(保証金・礼金など) | 300〜800万円 |
| 内装・設備工事費 | 1,000〜2,000万円 |
| 医療機器の購入 | 1,000〜3,000万円 |
| 広告・販促費 | 100〜300万円 |
| 開業手続き・許認可費 | 50〜150万円 |
| 人件費(開業前準備含む) | 100〜500万円 |
合計:3,000〜6,000万円以上かかるのが一般的です。
ただし、建築費は年々高騰しており、以前は坪60万円程度という時もありましたが、最近ですと坪80万円程度かかることが多いようです。
可能な限り相見積もり等で比較検討した方が良いでしょう。
開業後にかかる運転資金
- 家賃
- 人件費
- 薬品・備品仕入れ
- 広告・運用コスト
- リース料・ローン返済
最低でも3ヶ月分以上の運転資金を確保しておくことが望ましいとされています。
資金調達の代表的な方法と特徴
クリニックの開業や運営において、資金調達は事業のスタートラインに立つための最も重要な工程です。
自己資金のみで全ての費用を賄えるケースは稀であり、多くのドクターは複数の手段を組み合わせて資金を準備することになります。
ここでは、主力となる金融機関からの融資をはじめ、公的な制度融資や補助金活用など、代表的な調達手段ごとの仕組みやメリット・デメリットについて詳しく解説します。
自院の状況に最適な組み合わせを見つけるための参考にしてください。
金融機関からの融資(プロパー融資/信用保証付き)
資金調達の中で最も一般的であり、調達額の大部分を占めるのが、銀行や信用金庫などの民間金融機関からの融資です。
これには、信用保証協会の保証をつけて借り入れる「信用保証付き融資」と、金融機関が直接独自のリスクで貸し付ける「プロパー融資」の2種類があります。
実績のない開業時は「保証付き」からスタートするのが一般的ですが、資産状況や事業計画の確実性によってはプロパー融資が検討されることもあります。
メリット
- 大きな金額を一括で調達できる
- 複数年で返済できるためキャッシュフローが安定
最大の利点は、医療機器の購入や内装工事などにかかる大きな金額を一括で調達できる点にあります。
また、融資額を数年にわたって分割返済できるため、単年度の負担を平準化し、キャッシュフローを安定させやすいことも経営上の大きな強みとなります。
手元の現金を残しつつ事業を展開できるため、予期せぬ出費にも対応しやすくなります。
注意点
- 開業前は信用力がないため審査が厳しい
- 許認可が未取得だと融資が下りない
一方で、審査のハードルについては慎重に考える必要があります。
特に開業前は事業実績(決算書)が存在しないため、信用力が低いと判断されやすく、審査が厳しくなる傾向があります。
加えて、資金調達と行政手続きは密接に関係しており、クリニックの開設許認可が未取得の状態では、融資の実行(着金)がなされない点には十分な注意が必要です。
政府系金融機関(日本政策金融公庫など)
特に開業医が活用しやすいのが日本政策金融公庫の「新規開業資金」などの制度です。
ポイント
- 無担保・無保証での融資も可
- 低金利での貸付
- 計画書の完成度と手続きの正確性が審査のカギ
日本政策金融公庫を利用する最大のメリットは、原則として無担保・無保証人で融資を受けられる点にあります。
代表者個人の連帯保証が不要となるケースも多く、万が一のリスクを最小限に抑えながら開業準備を進めることが可能です。
また、国の政策に基づいた機関であるため、民間金融機関と比較して長期間固定の低金利で資金を借り入れできる点も、経営の安定化に大きく寄与します。
ただし、好条件である分、その審査は厳格に行われます。
単に「借りたい」という要望だけでなく、事業が確実に軌道に乗ることを示す事業計画書の完成度や、根拠のある数値計画が不可欠です。
加えて、公的な資金である以上、関連法規の遵守や行政手続きの整合性といった手続きの正確性が審査の可否を分ける重要なカギとなります。
補助金・助成金の活用(毎年制度は変わります)
融資と並んで検討したいのが、国や自治体から支給される補助金・助成金の活用です。
これらは原則として返済不要であるため、採択されれば経営的なメリットは非常に大きく、初期投資の負担を大幅に軽減できます。
ただし、融資とは異なり「いつでも申請できる」ものではなく、国の方針や年度によって公募される種類や条件が頻繁に変更される点に留意が必要です。
代表的な制度
- キャリアアップ助成金
- 人材開発助成金
- IT導入補助金
- ものづくり補助金 (医療法人は不可)
等々、毎年制度が変わるので、医療の補助金に詳しい専門家に事前に相談しましょう。
活用の注意点:
- 申請手続きが煩雑
- スケジュールと条件が厳格
- 補助金の多くは後払い(先に自分で資金を出す必要がある)
返済不要という大きなメリットがある反面、その申請には高いハードルが存在します。
まず、申請には膨大な書類作成と根拠資料の準備が必要であり、手続き自体が非常に煩雑です。
また、公募期間が短く設定されていたり、要件が細かく規定されていたりと、スケジュールと条件が厳格であるため、少しの不備や遅れで不採択となるリスクがあります。
そして最も注意すべきは、多くの補助金が「後払い(償還払い)」の仕組みをとっている点です。
設備導入や工事の支払いを先に自社の資金で済ませ、完了報告と検査を経てからようやく入金される流れとなるため、当面の支払いに充てる資金としては使えません。
「補助金があるから大丈夫」と過信せず、あくまで一時的な資金の持ち出し(つなぎ融資や自己資金)が必要になることを前提に計画を立てる必要があります。
医療機器リース・割賦購入
CTやMRI、レーザー機器などの高額な医療機器を導入する際、すべてを融資や自己資金で購入しようとすると初期投資が膨れ上がり、資金繰りを圧迫する恐れがあります。
そこで、銀行融資と並んで多くのクリニックで採用されているのが、リース会社を利用した賃貸借(リース)や割賦契約による分割払いです。
導入のメリットと注意点
- 初期費用を抑えられる
- リース料は経費計上できる
- 返済計画を要検討
- 管理が楽
この方法の最大のメリットは、初期費用を大幅に抑えられる点にあります。
多額の購入資金を一括で支払う必要がないため、手元の現金を温存したり、銀行融資の枠を内装工事や運転資金など他の用途に確保したりすることが可能です。
また、リース契約であれば毎月のリース料を全額経費として計上できるため、節税対策としても有効です。
加えて、固定資産税の納付や動産保険の手続きなどをリース会社が代行してくれるため、資産管理の手間が楽になるという事務的な利点も見逃せません。
一方で、導入にあたっては慎重な返済計画の検討が必要です。
リースや割賦は初期負担が軽い反面、金利や手数料が含まれるため、現金購入と比較して支払い総額は高くなる傾向があります。
長期にわたって毎月の固定費として発生し続けるため、将来の医業収益で無理なく支払える範囲かどうか、融資返済と合わせてシミュレーションを行うことが大切です。
資金調達と行政手続きの深い関係
多くの開業医の先生方が誤解されがちなのが、「資金調達」と「行政手続き(許認可)」は別々の問題であるという認識です。
しかし実際には、この2つは車の両輪のように密接に連動しており、切り離して考えることはできません。
金融機関や行政庁は、単に「資金があるか」だけでなく、「法的に問題なく医療事業を開始・継続できる状態にあるか」を厳しくチェックします。
ここでは、許認可の成否が資金調達に直結する理由について解説します。
許認可が資金調達の審査に影響する理由
金融機関にとって最大のリスクは、融資した資金が返済されないことです。
医療機関の場合、「許認可が下りない=開業できない(売上が立たない)」ことを意味するため、審査の段階で行政手続きの進捗や確実性が厳しく問われることになります。
- 法人による診療所開設か?個人開設か?によって融資審査内容が異なる
- 診療科目ごとの設備基準を満たしているか確認される
- 地域の医療計画との整合性を問われるケースも
まず、事業主体が「法人による診療所開設か、個人開設か」によって、融資審査の内容や必要書類が大きく異なります。
特に医療法人や一般社団法人として開設する場合は、定款の認証や登記といった法的な手続きが適正に完了しているかが前提条件となります。
また、内装や物件選びの段階で、標榜する診療科目ごとの設備基準を満たしているかも重要なチェックポイントです。
例えば、手術室の広さやX線室の防護措置などが医療法の基準に適合していなければ、保健所の許可は下りず、結果として融資実行も見送られてしまいます。
さらに、有床診療所などの場合、地域の医療計画との整合性を問われるケースもあります。
その地域で病床規制がかかっていれば、どんなに資金があっても計画自体が認められないため、事前の行政協議が不可欠となります。
補助金申請と行政手続きの連動
補助金や助成金の申請においても、行政手続きとの整合性は極めて重要です。
これらは「申請書さえ書けばもらえる」ものではなく、その前提として「適法に事業が行われている(または行われる予定である)」ことを公的な書類で証明しなければならないからです。
補助金・助成金の多くは、
- 定款や登記簿(法人の場合)
- 開業届・事業計画書
- 資格証明書類
などの行政書類の整備が必要不可欠です。
補助金・助成金の申請には、事業の実態を証明するための公的書類が必ず求められます。
具体的には、法人の場合であれば定款や登記簿謄本によって組織の存在を証明し、事業開始の証拠として開業届や詳細な事業計画書の提出が必要です。
また、医療機関特有の要件として、医師免許証などの資格証明書類も不可欠です。
これらの行政書類に記載された内容(所在地、代表者名、事業目的など)と、補助金申請書の内容が一言一句整合していなければ、不備として審査対象外となることもあります。
つまり、補助金獲得を目指すのであれば、その土台となる行政手続きや書類整備を、不備なく完璧に行っておくことが大前提となるのです。
医療分野に明るい行政書士をパートナーにすべき理由
クリニックの開業や医療法人の運営において、行政書士は単なる「書類作成の代行者」ではありません。
複雑な医療法務の交通整理を行い、最短ルートで事業を実現させるための戦略的パートナーです。
しかし、行政書士であれば誰でも良いわけではありません。
ここでは、医療業界に特化した専門家を味方につけるべき具体的な理由を解説します。
専門的な許認可手続きをスムーズに進められる
- 保健所・厚労省・都道府県への届出
- 医療法人の設立・定款変更
- 再生医療・自由診療導入時の許可取得
これらをミスなく、最短で進めるには専門知識が不可欠です。
行政書士も専門分野は細分化されていますから、医療を得意とし実績豊富な専門家そばにおきましょう。
補助金・融資申請書類の作成支援
- 事業計画のブラッシュアップ
- 提出書類のチェック・整合性確認
- 公募期間内での迅速な対応
多くのクリニックが、「自分でやって失敗して時間とお金を無駄にした」という経験をしています。
なお、助成金の申請代行は社会保険労務士の独占業務となっています。
トラブル防止とリスクヘッジ
- 無認可での診療行為 → 罰則
- 保健所の検査で不備が発覚 → 開業延期
- 事業資金の用途が要件外 → 補助金返還リスク
最初から行政書士を味方に付けることで、こうしたリスクを避けることができます。
資金調達の成功事例と失敗事例
資金調達と許認可手続きの連携がいかに重要か、実際の事例を見るとより鮮明になります。
専門家をうまく活用してスムーズに資金を得たケースと、手続きの順序を誤って大きな損失を出してしまったケースをご紹介します。
成功事例:行政書士の支援で補助金1000万円獲得
ある美容クリニックでは、事前に行政書士と協業し、
- 医療機器選定
- 事業計画作成
- 補助金の申請スケジュール管理
- 補助金の採択
- その後の報告義務の代行
これにより、補助金を満額採択され資金繰りも安定。
結果として、設備投資の回収が早まりました。
失敗事例:許認可が下りず融資取り消し
開業準備を進めていたA医師は、医療機器を先行発注。
しかし、診療科目の基準を満たせず、保健所の許可が下りず…。
結果、金融機関からの融資が取り消され、数百万円の損失を被る事態に。
まとめ|資金調達の第一歩は「正確な計画と専門家との連携」
資金調達は、ただお金を借りればいいというものではありません。
クリニック経営の土台を作る大切な工程です。
そしてその裏側には、
- 法律
- 行政手続き
- 公的支援制度
といった、専門的な要素が複雑に絡み合っています。
こうした全体像を理解し、早い段階から医療許認可に精通した行政書士をパートナーにすることが、成功の近道です。
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