MS法人とは?医療法人との違いやメリット・デメリットを徹底解説!
クリニック開業
2025/2/9
2025/2/7

この記事の監修

行政書士法人RCJ法務総研 代表 / 行政書士
株式会社リアルコンテンツジャパン(経済産業省認定経営革新等支援機関) 代表取締役
古川 晃
医療許認可の専門家として17年、医療法人設立・分院開設・合併・解散・一般社団法人による診療所開設など医療許認可1500件以上 クリニック様の助成金・補助金・融資などの資金調達100億円以上の支援実績
開業医としてクリニックを経営していると、税負担の軽減や事業の拡大を考える機会が増えてくるでしょう。
そこで注目されるのが「MS法人(メディカルサービス法人)」です。MS法人を上手に活用することで、経営の効率化や資金調達の幅が広がる可能性があり、昔から活用されています。
しかし、医療の非営利性の原則から、医療法により様々な制限があります。
近年、ますますこの非営利性は厳しく行政にチェックされるようになっております。
非営利性に反することが行われていることがわかれば、分院を開設したいときや、何か定款変更を行いたい時の認可申請の時に指摘され、改善をするまで新たな認可を認めない、ということもしばしば生じています。
本記事では、MS法人の概要や医療法人との違い、メリット・デメリット(注意点)、そして具体的な活用事例について詳しく解説します。
MS法人とは
MS法人(メディカルサービス法人、またはメディカルサポート法人)とは、医療機関に関連する業務を行う一般の営利法人で、実は特に法律上の定めのある法人ではありませんので、MSというのは俗称となります。
具体的には、以下のような業務を担当します。
- 医療機関の事務管理(受付、経理、人事など)
- 医療機器や医療材料の購入・リース
- 建物や設備の管理・メンテナンス
- 人材派遣や人材紹介
- マーケティング、広告、その他のコンサルティング業務
- 知的財産の管理業務
医療法により、医療行為自体は医療法人や個人医院でしか行えませんので、MS法人は医療法人でしか行えない業務以外の周辺業務を担当し、医療機関の経営をサポートする法人=メディカルサービス法人、またはメディアカルサポート法人=MS法人 ということです。
MS法人と医療法人の違い
MS法人と医療法人は、目的や運営方法において大きな違いがあります。
項目 | MS法人 | 医療法人 |
設立目的 | 医療機関の周辺業務を担当 | 医療行為を提供 |
形態 | 株式会社・合同会社など | 医療法に基づく法人 |
設立の自由度 | 高い
(誰でも設立可能) |
厳しい
(都道府県知事の認可が必要) |
収益の分配 | 可能 | 一定の制限あり |
税制 | 一般法人として課税 | 優遇措置あり |
このように、MS法人は医療法人とは異なり、設立や運営の自由度が高く、経営戦略に合わせて活用しやすい特徴があります。
MS法人のメリット
MS法人のメリットをいくつかご紹介します。
1. 節税ができる
医療機関の周辺業務をMS法人で請け負うことで、収益を分散させることができ、結果的に税負担を軽減できます。
2. 事業拡大がしやすい
MS法人では、医療関連の周辺事業を自由に展開できます。
たとえば、介護事業、医療機器販売、健康診断センターの運営などを行うことで、医療機関の収益源を多角化することが可能です。
3. 資金調達ができる
医療法人は出資者への配当が制限されるため、資金調達の手段が限られます。
一方、MS法人は一般の株式会社や合同会社と同じく、投資家からの資金調達も可能です。
4. 業務効率の改善
MS法人を活用することで、医師や看護師が本来の医療業務に専念しやすくなります。
事務作業や経営管理をMS法人に委託することで、クリニック全体の業務効率が向上します。
MS法人のデメリット
デメリットもいくつかご紹介します。
1. 設立・運営コストがかかる
MS法人の設立には、法人登記の費用や税理士・行政書士への報酬が発生します。
また、法人として運営するためには、会計処理や税務申告の手間も増えます。
2. 消費税の増加
個人開業医は売上1,000万円以下であれば消費税が免税されることがありますが、MS法人を設立すると課税事業者になる可能性が高まり、消費税の負担が増えることがあります。
3. 税務否認のリスクがある
MS法人を利用した節税スキームが税務署に否認されるリスクもあります。
取引には実態が必要です。MS法人と医療機関の取引が実態のないものと判断された場合、所得隠しと見なされる可能性があります。
4. 役員の兼務ができない
MS法人の役員が医療法人の役員を兼務することは法律で禁止されています。
これにより、経営の一元管理が難しくなる場合があります。
これは近年非常に厳しくチェックをされており、これが発覚すると取引の解消や、役員の交代を指導されたり、悪くすると取引そのものを否認され、返金や精算等を求められることがあります。
違法状態があるままでは新たな定款変更認可は認められず、困っている医療法人も多くあります。
分院開設など、先に契約をしてしまって家賃発生、人件費発生しているのに認可が得られず診療を開始できない、そのような多大なリスクが生じます。普段から非営利性の徹底を心がけましょう。
MS法人の活用事例
活用事例①:医療機器のリース会社としての運営
高額な医療機器をMS法人で購入し、医療法人にリースする形をとりました。
これにより、クリニック側では設備投資の負担を軽減しつつ、MS法人側でリース収益を得ることで法人としての利益を確保しました。 ただし、種類ごとに医療機器の販売・賃貸業などの許認可が別途必要になるものもあります。 一括全額購入よりも、リースや賃貸にすることでキャッシュフローを改善することができます。 |
活用事例②:事務代行・経営支援サービスの提供
MS法人を設立し、医療法人の事務代行業務を請け負うとともに、近隣のクリニックにもサービスを提供しました。
これにより、自院の業務効率化だけでなく、MS法人の収益源を増やすことに成功。 医療法人経営で培ったノウハウを外部に提供するコンサルティングや、研修なども収益の柱として育っています。 |
活用事例②:関連事業の展開
MS法人でスポーツジムや飲食店、介護事業所などを展開し、医療法人と連携して利用者の相互循環を生むことで相乗効果を生むことに成功。
医療法人だけでなく、 MS法人も事業会社として成長をしています。 |
まとめ
MS法人は、医療機関の経営効率を高め、節税や資金調達の手段としても有効な法人形態です。
ただし、医療法の非営利性の原則や、税務リスクや運営コストの負担など注意点もあるため、慎重に設立・運営する必要があります。
特に、税法だけでなく、医療法の観点からのチェックが必須です。
税務上はOKであるが、医療法上NGである、ということがしばしば起こり得ます。税理士さんは当然税務のプロですが、全員が医療法を熟知しているわけではありません。
開業医の皆様がMS法人を活用する際には、税理士や医療に特化した行政書士と相談しながら適切な運営方法を検討することをおすすめします。
MS法人を上手に活用し、より安定したクリニック経営を実現しましょう。
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