一般社団法人で診療所(クリニック)の開設はできるの?メリットデメリット、注意点を解説!
一般社団法人による診療所開設
2025/2/5
2025/2/5
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この記事の監修

行政書士法人RCJ法務総研 代表 / 行政書士
株式会社リアルコンテンツジャパン(経済産業省認定経営革新等支援機関) 代表取締役
古川 晃
医療許認可の専門家として17年、医療法人設立・分院開設・合併・解散・一般社団法人による診療所開設など医療許認可1500件以上 クリニック様の助成金・補助金・融資などの資金調達100億円以上の支援実績
診療所(クリニック)を開設する際、多くの医師が医療法人や個人開業を選択します。
しかし、一般社団法人という形態でも診療所の開設が可能なのか、気になる方もいるでしょう。
本記事では、一般社団法人で診療所を開設することの可否、メリット・デメリット、手続きや注意点について詳しく解説します。
一般社団法人とは?医療法人、株式会社とどう違う?
一般社団法人とは、営利を目的とせず、一定の目的を持つ団体が法人格を取得するための形態の一つです。
2008年に施行された「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」に基づいて設立されます。
医療法人との違い
医療法人は、医療法に基づいて設立される法人であり、医療機関の運営を目的としています。
主な違いは以下の通りです。
項目 | 一般社団法人 | 医療法人 |
設立要件 | 設立しやすい(法務局に登記のみ) | 厳格な要件あり(都道府県の認可制) |
目的 | 制限なし | 原則医療の提供(別途認可により附帯業務等) |
医療施設の開設 | 非営利を徹底した法人であれば別途許可を得ることで可能 | 可能 |
株式会社との違い
株式会社は営利目的の法人形態であり、利益の分配(配当)が可能です。
一般社団法人は非営利法人であり、社員への利益分配が禁止されています。
一般社団法人で診療所(クリニック)を開設することはできる?
一般社団法人でも診療所の開設は可能ですが、通常の方法では開設できません。
一般的には、原則として診療所の開設が認められるのは「医療法人」または「医師(個人)」のみと考えられてきました。
ただし、実は以下の場合には一般社団法人での開設が可能とされています。
- 非営利を徹底した非営利型の一般社団法人であること
- 管轄の保健所に開設許可を得ること
そのため、ただ一般社団法人を設立して直ちに診療所(クリニック)運営ができるというわけではありませんが、適切な行政手続きを経れば可能となるということです。
一般社団法人で診療所(クリニック)を開設するメリット・デメリット(医療法人との比較)
一般社団法人で診療所(クリニック)を開設する上で医療法人と比較してメリット・デメリットになることについて解説します。
メリット
- 代表者は医師または歯科医師に限定されていない
医療法人は原則として代表者は医師または歯科医師に限定されています。
- 都道府県の認可制でない
医療法人は、設立自体に認可が必要ですが、一般社団法人は都道府県の認可、直接的な関与がありません。
- 毎年の事業報告義務がない
医療法人は毎年、事業報告や経営状況報告が義務化されていますが、一般社団法人は2024年現在は義務化されていません。
ただし、今後必要になる可能性がないとは言えません。
- 事業目的が医療等に限定されない
医療法人は、事業目的が本来業務(医療)・附帯業務(別途認可制)・附随業務に限定されていますが、一般社団法人はそれに限定されません。
デメリット
- 開設許可の審査が画一的でない
医療法人は都道府県の認可ですが、一般社団法人の開設許可申請は診療所を管轄する保健所に委ねられているため、地域によって審査の基準や時間が大きく異なります。
同じ理由で、地域によっては審査が早いが、審査が厳格であったりして長期化したりすることがあります。
- ノウハウを熟知した専門家の関与がないと許可を得るのが難しい
医療法人は歴史も長くノウハウも確立していますが、一般社団法人による診療所開設は歴史も浅く、熟知している専門家が少ないです。
保健所によっては事例がなく、担当職員も経験がなく進められないということがあります。
- 金融機関によっては融資が受けられない
医療法人を特に好み優遇する金融機関はありますが、一般社団法人はそうでない場合があります。
一般社団法人で診療所(クリニック)を開設する方法
続いて、一般社団法人で診療所(クリニック)を開設する方法についても解説します。
①非営利型の一般社団法人の設立
- 公証役場で定款を認証(定款を非営利を徹底している内容にする必要がある)
- 法務局へ法人登記(司法書士の独占業務)
②診療所の開設に向けた準備(ヒトモノカネの要件を揃える)
ヒト
- 医師や医療従事者の確保する
モノ
- 診療所の場所、内装設備、医療機器などの必要なモノを確保する
カネ
- 設備資金や、運転資金など必要な資金計画を明確にし、資金調達をする
必要な行政手続き
- 診療所の住所を管轄する保健所にて許可取得(行政書士の独占業務)
- 許可取得後、開設届を提出、保健所職員の立ち会いによる実地検査
- 保険診療がある場合は、保険医療機関指定を行う
- 施設基準・公費医療を行う場合は手続きを行う
- 雇用がある場合は、雇用保険や社会保険などの手続き(社会保険労務士の独占業務)
- 税務署への届出(税理士の独占業務)
そのほか、医療機器メーカーやディーラー、医療廃棄物業者、クレジットカード決済代行、医療ローン、その他民間企業との必要な契約を準備する
一般社団法人で診療所(クリニック)を開設する際の注意点・ポイント
一般社団法人で診療所(クリニック)を開設する際の注意点やポイントは下記の通りです。
- 事業計画を明確にする ヒトモノカネの確保
- 法令を理解し、許認可事業であること、罰則等を理解する
- 非営利性を理解し、維持徹底する
- 行政との事前相談を徹底する
- 詳しい専門家、相談相手を間違えず確保する
まとめ
一般社団法人で診療所を開設することは可能ですが、医療法の制約があるためエステサロンなどのように自由に開設することはできません。
許認可事業であることを理解し、法令を遵守しなければ罰則はもちろん、そもそも許可を得られず大変なことになります。
まず、また、一般社団法人による診療所運営に詳しい行政書士を必ず確保し、常に相談しながら進めましょう。
その上で、事前に行政機関への相談を行い、適法性を確認しながら進めていきましょう。
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