医療法人が毎年届出なくてはいけない事業報告書等ってなに?
医療法人化
2023/3/9 2023/4/5
この記事の監修
行政書士法人RCJ法務総研 代表 / 行政書士
株式会社リアルコンテンツジャパン(経済産業省認定経営革新等支援機関) 代表取締役
古川 晃
医療許認可の専門家として17年、医療法人設立・分院開設・合併・解散・一般社団法人による診療所開設など医療許認可1500件以上 クリニック様の助成金・補助金・融資などの資金調達100億円以上の支援実績
医療法人の経営は、一般の会社に比べて行政への手続きが多く煩雑でついつい忘れがちですよね。
そんな中でも特に忘れやすく、何年も溜まってしまっていていざという時に困った!となりがちなのが、毎年の事業報告書等の届出です。
今回は、この毎年の事業報告書等の届出について詳しく解説していきます。
なお、医療法人は様々な種類がありますが、今回は特殊な法人を除いて、現在最も一般的で数が多い基金拠出型医療法人と経過措置型医療法人(持分ありの旧医療法人)について説明します。
一般的な街の診療所のみを経営する医療法人はほぼこれに該当します。
1 事業報告書等の届出って?
医療法人は、医療法に基づいて様々な規定が設けられていますが、事業報告書等の作成と届出義務について、以下のように定められています。
この届出義務には罰則規定があり、書類を届け出なかったり、虚偽の届出をしたりした場合は、医療法の規定により、法人の理事又は監事は、20万円以下の過料に処されますので、ついつい忘れてしまったということのないようにしましょう。
医療法人は、毎会計年度終了後2ヶ月以内に、
- 事業報告書
- 財産目録
- 貸借対照表
- 損益計算書
- その他厚生労働省令で定める書類
(これらを併せて事業報告書等と呼んでいます)を作成しなければなりません。(医療法第51条第1項)
また、監事は、毎会計年度終了後3ヶ月以内に、監事監査報告書を作成し、医療法人の社員総会又は理事に提出しなければなりません。(医療法第46条の8)
上記の事業報告書等と、監事監査を併せて、会計年度終了後3ヶ月以内に、都道府県に届出る義務があります。(医療法第52条第1項)
この事業報告書等の届出と併せて、資産の変更登記を法務局に行う必要があります。
事業報告書等の届出だけしてもダメで、資産変更の登記だけしてもダメで、どちらかだけではなく両方が必要になります。セットで必要になることを覚えておきましょう。
2 なぜ義務なの?
医療法人は、非営利性と法人運営の健全性(永続性)が求められます。
つまり、一般の株式会社のように利益を株主に配当したり、株式投資や不動産投資など医療に関係のないことに対して資金を流用したりすることが原則として認められていません。
そのため、税務署への決算報告とは別に、管轄官庁に不適切なお金の使われ方がされていないということを毎年きちんと報告することが義務付けられているということです。
3 何が必要なの?
事業報告書等については、基準となる様式が用意されています。
各都道府県により多少異なりますが、その様式に沿って作成していきます。
基本的には以下の書類が必要で、都道府県によっては追加で提出を求められる場合があります。
- 事業報告書
- 財産目録
- 貸借対照表
- 損益計算書
- 監事監査報告書
- 関係事業者との取り引きの状況に関する報告書
- その他の書類
※従来は紙による提出でしたが、今後はデジタル化によりオンラインによる電子届出が一般的になると予想されます。
電子届出について 厚生労働省HPより
4 届出るのを忘れてしまっていたらどうなるの?
罰則規定があることは上述しましたが、それだけでなくその他に実務上、もっと困ることがあります。
医療法人は定款を変更するにはその都度、都道府県の認可を得る必要があります。
例えば、新たに分院を開設するときなどですね。
いざ分院を開設しようと認可申請を行う際に、この事業報告書等の届出を怠っていると、怠っていた期間の届出を遡って全て行わないと認可申請が受理されないということがよくあります。
実務上、ただでさえ定款変更の認可に数ヶ月かかるのに、分院開設をしたいという場合、空家賃が発生しないように少しでも早く認可を得なくてはならないというときに、怠った過去の分を全て遡って届出るとなるとさらに時間をロスすることになります。
医療法務について顧問の行政書士さんがいらっしゃる場合はこのようなことは起こらないと思いますが、いらっしゃらない場合、この事業報告書等の届出は本来顧問税理士さんの業務ではありませんから、会計周りを全て顧問税理士さんに任せっきりにしていると長年誰も手をつけずやっていなかったということがしばしばあります。
あくまで決算などの税務とは別に必要な届出となります。
今一度しっかりと適正に行われていることを確認しましょう。
もし漏れがあった場合は、医療法務に明るい行政書士さんにご相談下さい。
弊社ではこれまで1500以上のクリニック様のご支援をしております。この事業報告書等の報告だけでなく、知らず知らず気づかず損をしていることもあるかもしれませんので、ご不安な方はぜひ一度お気軽にお問い合わせ下さい。
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医療許認可の専門家として17年。医療許認可1,500件以上の実績。
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分院開設、医療法務顧問、補助金、助成金支援までサポートしております。
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