カルテは「5年保存」では甘い?医師法第24条の絶対的記載事項と、行政指導(個別指導)で泣かないための鉄則

クリニック開業・経営

2026/2/18 2026/2/18

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この記事の監修

古川 晃

行政書士法人RCJ法務総研 代表 / 行政書士 
株式会社リアルコンテンツジャパン(経済産業省認定経営革新等支援機関) 代表取締役

古川 晃

医療許認可の専門家として17年、医療法人設立・分院開設・合併・解散・一般社団法人による診療所開設など医療許認可1500件以上 クリニック様の助成金・補助金・融資などの資金調達100億円以上の支援実績

日々の診療、誠にお疲れ様です。

先生は、ご自身が書いている(あるいは入力している)「カルテ」に、どれほどの法的効力があるか意識されたことはありますか?

「自分とスタッフが分かればいい」

「忙しいから、定型文をコピペしている」

もし、そのような運用をされているとしたら、今すぐ見直しが必要です。

なぜなら、カルテは単なる備忘録ではありません。

  1. 診療報酬請求の「根拠」(公的資金を受け取るための証明書)
  2. 医療訴訟における「唯一の防御手段」(過失がないことの証明)

特に恐ろしいのが、行政(厚生局)による個別指導や、万が一の医療過誤訴訟の場面です。

法律の世界では、証拠が第一。「カルテに書かれていないことは、実施していないのと同じ」とみなされます。

どんなに丁寧に診察し、詳細な服薬指導を行っていても、それが証拠としてカルテに残っていなければ、「診療の実態がないのに不正に請求した」と判断され、巨額の返還金や、最悪の場合は医師免許への影響さえ及ぼしかねません。

本記事では、医師法に基づく正しいカルテの記載ルール、多くの先生が誤解している「保存期間」の罠、そして行政指導を乗り切るための運用ノウハウについて徹底解説します。

基本のキ!医師法第24条が定める「絶対的記載事項」とは

まずは法律の基本を押さえましょう。

カルテの記載義務は、医師法第24条によって定められています。

医師法第24条(要約)

医師は、診療をしたときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない。

ここで重要なのは「遅滞なく」という言葉です。記憶が薄れてからまとめて書くのではなく、診療の都度記載することが求められています。

 

必ず記載すべき「絶対的記載事項」

医師法施行規則により、以下の事項は必ず記載しなければなりません。

  1. 診療を受けた者の住所、氏名、性別、年齢
  2. 病名及び主要症状(主訴)
  3. 治療方法(処置・投薬・処方など)
  4. 診療の年月日

保険診療における「+α」の記載義務

保険医療機関(ほとんどのクリニック)の場合、上記に加えて「保険診療を行う上で必要な事項」も記載しなければなりません(療養担当規則)。

  • 指導管理の内容: 特定疾患療養管理料などを算定する場合、「どのような指導を行ったか」の要点。
  • 検査・投薬の必要性: なぜその検査が必要だったのか、なぜその薬を選んだのかの医学的根拠。

 

「〇〇病の疑いのため」といった記載もなく、漫然と検査を行えば、後から「過剰診療」として査定(減額)されるリスクが高まります。

【勘違い厳禁】カルテ保存期間の「3つの基準」と「10年保存」の推奨

「カルテの保存期間は5年ですよね?」

多くの先生がそう答えます。確かに法律上は正解ですが、経営リスク管理上は不正解です。

カルテの保存期間には、実は3つの異なる基準が存在します。

① 医師法上の義務:5年間

医師法第24条第2項により、診療が完結した日から5年間の保存が義務付けられています。

これに違反すると罰則(50万円以下の罰金)があります。

② 保険医療機関としての義務:完結の日から3年間(※要注意)

保険診療の記録としては、療養担当規則により「完結の日から3年間」とされています。

ただし、「領収書等の関係書類」等は税法上7年間の保存が必要ですし、後述する民事時効を考慮すると、3年で廃棄するのは論外です。

③ 民事訴訟(損害賠償)への備え:実質10年間

ここが最も重要です。

もし患者さんから「数年前の治療ミスで後遺症が残った」として損害賠償請求を起こされた場合、その時効はいつでしょうか?

不法行為に基づく請求は「損害を知った時から3年」ですが、債務不履行(契約違反)に基づく請求は「権利を行使できる時から10年」です。

つまり、治療から9年後に訴えられる可能性があるのです。

その時、すでにカルテを廃棄していたらどうなるでしょうか?

「過失がなかったことを証明する手段」を自ら捨ててしまったことになり、裁判で敗訴する確率が格段に上がります。

したがって、当事務所では、「カルテは最低10年間保存する」ことを強く推奨しています。

電子カルテのサーバー容量や、外部倉庫の保管料は「保険料」だと割り切りましょう。

震えて眠るな!厚生局による「個別指導・監査」とカルテの不備

開業医の先生が最も恐れるイベント、それが「個別指導」です。

厚生局から呼び出しを受け、カルテとレセプトを持参し、技官(医師)の面接を受けます。

ここでカルテの記載不備が露呈すると、以下のような指摘を受け、自主返還(お金を返すこと)を求められます。

よくある指摘事項(返還対象)

「画一的な記載」

    • 毎回「著変なし」「do処方」としか書かれていない。
    • 特定疾患療養管理料を算定しているのに、具体的な指導内容(食事指導、運動指導など)の記載がない。
    • →「指導の実態がない」とみなされ、管理料全額返還。

「医学的根拠の欠如」

    • 長期にわたりビタミン剤や湿布を処方しているが、症状詳記や有効性の評価がない。
    • →「漫然投与」として薬剤料返還。

「同意の記録なし」

    • 自費診療や特殊な検査を行った際の、患者の同意取得記録がない。

 

個別指導は「指導」ですが、ここで悪質(架空請求や付け増し請求、カルテの改ざん)と判断されると「監査」に移行し、保険医療機関の指定取消(事実上の廃業)処分を受ける可能性があります。

電子カルテ導入時の落とし穴。「電子保存の三原則」を守れているか?

最近は新規開業の9割以上が電子カルテです。

しかし、ただパソコンに入力して保存すればいいわけではありません。厚生労働省のガイドラインによる「電子保存の三原則」を守る必要があります。

① 真正性(Authenticity)

  • 誰が、いつ作成したかが記録されていること。
  • 書き換えた場合、修正履歴が残ること。
  • ※WordやExcelでカルテを作るのは、簡単に上書き修正して履歴を消せてしまうため、原則NGです。

 

② 見読性(Readability)

  • 診療や監査の際に、直ちに明瞭な状態で画面に表示・印刷できること。
  • システムトラブルで見られなくならないよう、バックアップ体制が必要です。

 

③ 保存性(Storability)

  • 法令で定める期間、データが消失・破壊されないよう管理されていること。
  • ウイルス対策や、災害時のバックアップ対策が含まれます。

メーカー製の電子カルテなら基本的にはクリアしていますが、安価なクラウドカルテや自作システムを使う場合は注意が必要です。

【FAQ】カルテの運用・保存に関するよくある質問

カルテの運用・保存に関するよくある質問に回答します。

Q1. 紙カルテから電子カルテに移行した際、古い紙カルテは捨てていい?

要件を満たしていれば良いですが、満たさないこともあるので保存期間を満たすまで保管しておくことをお勧めします。

電子カルテ導入前の紙カルテは、スキャンして電子化(PDF化)することも可能ですが、その場合は「e-文書法」の要件(電子署名やタイムスタンプ等)を満たす必要があります。

単にスキャンしただけでは原本代わりになりませんので、原則は紙のまま、最終記載から5年(推奨10年)保管した方が良いです。

要件を満たしていて廃棄して良いとなったときは、間違っても通常の燃えるゴミなどに出さず、情報漏洩対策を行っている業者に溶解の依頼をしましょう。

Q2. 患者さんから「カルテを見せて(開示)」と言われたら拒否できる?

原則として拒否できません。

個人情報保護法および厚生労働省の指針により、患者本人からの開示請求には応じる義務があります。

「見せるとトラブルになりそうだから」という理由での拒否は認められません。

むしろ、日頃から「いつ誰に見せても恥ずかしくないカルテ」を書いておくことが、トラブル防止の最善策です。

Q3. 記載ミスをした場合、修正液で消してもいい?

絶対にNGです。

修正液や修正テープで消すと、「何を隠そうとしたのか(隠蔽工作)」と疑われます。改ざんとみなされるリスクが高いです。

紙カルテの場合は、「二重線を引き、訂正印を押し、正しい内容を記載する」のが鉄則です。元の記載が読める状態にしておくことが重要です。

電子カルテの場合は、修正履歴機能を使用してください。

まとめ:カルテはクリニックの「歴史」であり「盾」である

カルテは、患者様の病歴という「歴史」そのものであり、いざという時に先生とクリニックを守る最強の「盾」です。

「たかが記録」と軽んじれば、その記録の不備によって、積み上げてきた信頼や資産を一瞬で失うことになりかねません。

「指導や監査が怖い」

「カルテの運用が自己流で不安だ」

「閉院時のカルテ保管場所に困っている」

そのようなお悩みをお持ちの先生は、ぜひ医療法務専門の行政書士にご相談ください。

先生が安心して診療に集中できるよう、バックオフィスの法務・コンプライアンス体制を強固に守ります。

個別指導対策、カルテ管理規定の作成、承継時の書類整備。

医療現場を知り尽くしたRCJグループへお任せください。

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