【2025年最新版】クリニック開業の全手順と行政手続きチェックリスト|物件契約から保険診療開始までの「最短ロードマップ」

クリニック開業・経営

2025/12/26 2025/12/26

この記事の監修

古川 晃

行政書士法人RCJ法務総研 代表 / 行政書士 
株式会社リアルコンテンツジャパン(経済産業省認定経営革新等支援機関) 代表取締役

古川 晃

医療許認可の専門家として17年、医療法人設立・分院開設・合併・解散・一般社団法人による診療所開設など医療許認可1500件以上 クリニック様の助成金・補助金・融資などの資金調達100億円以上の支援実績

勤務医として多くの経験を積まれ、満を持して自身の城(クリニック)を構える。

先生にとって、クリニックの開業は医師人生の集大成とも言える一大プロジェクトでしょう。

「最新の医療機器を入れたい」

「患者さんがリラックスできる内装にしたい」

「信頼できるスタッフを集めたい」

夢は膨らみますが、実は多くの先生が直面し、頭を抱える「現実的かつ巨大な壁」が存在します。

それが、「行政手続き(許認可)」の壁です。

日本の医療法は世界でもトップクラスに厳格です。コンプライアンスに疑義があれば開設が認められなかったり、罰則があったり、気をつけなければならないことは山積みです。

どんなに素晴らしい内装が完成し、優秀なスタッフが揃っていても、保健所の「開設届」と厚生局の「保険医療機関指定」が下りなければ、クリニックとして保険診療を行うことは不可能です。

もし、手続きの不備でオープンが1ヶ月遅れたら?

家賃、人件費、リース料……売上ゼロの状態で、数百万円のキャッシュが消えていきます。

本記事では、数多くの開業支援を行ってきた行政書士の視点から、「失敗しないための開業ロードマップ」と、絶対に押さえておくべき「手続きのツボ」を徹底解説します。

目次[非表示]

時系列で把握!クリニック開業までの「標準ロードマップ」

開業準備は「逆算」がすべてです。

「○月○日にオープンしたい」というゴールから逆算し、いつまでに何をしなければならないかを把握しましょう。

【1年前〜8ヶ月前】コンセプト策定・物件選定・資金調達

まずは「どこで、誰に、どんな医療を提供するか」を固めます。医療といえど、事業である以上はマーケティング設計が必須です。

診療圏調査を行い、物件を探し、事業計画書を作成して資金計画を明確にし、銀行融資を取り付けます。

近年は、保険診療を行わない自費専門のクリニックや、過当競争が高まっているエリアへの融資は慎重になっていて、以前のように用意に資金調達ができる時代ではなくなりました。

事前にしっかりと自己資金(現預金)を準備しておく、しっかりとしたマーケティング調査をして事業計画、資金計画を明確にしておかないと、苦労することになります。

融資調達に長けている専門家との繋がりを事前に持っておくことをお勧めします。

弊社でも、資金調達のお手伝いをしており、これまでの助成金・補助金や融資調達のご支援実績は100億円を超えております。

【6ヶ月前】重要!「外来医師多数区域」の事前届出と協議

ここが2025年以降の最重要ポイントです。

もし先生の開業予定地が、東京都心や大阪市内などの「外来医師多数区域(医師が足りている地域)」に該当する場合、原則として開設の6ヶ月前までに都道府県へ届出を行い、地域医療への貢献方針について協議しなければなりません。

これが現場レベルで実行されるのは2025年12月現在ではまだ明確になっていませんが、2026年4月から改正医療法は施行となります。

これを知らずに物件契約を進め、「届出を忘れていたので半年待ってください」と行政に言われ、計画が頓挫するケースが急増しています。

【4ヶ月前】内装設計・保健所への「事前相談」

物件が決まったら、内装工事に入る「前」に、必ず管轄の保健所へ図面を持参して「事前相談」に行きます。

「ここに診察室を作ります」「処置室の動線はこうです」と説明し、医療法の施設基準を満たしているかチェックを受けます。

これを飛ばして工事を始めると、後で壁を壊してやり直す羽目になります。

意外とこれを行っておらず、工事をやり直しているケースが散見されます。

特に、居抜きの物件だからといって承認が得られると勘違いしている方も多いですが、それはそれこれはこれでキチンと平面図を持って事前に承認を得ないといけません。大変危険なポイントです。

【2ヶ月前】内装工事完了・開設届の提出・実地検査

内装が完成し、医療機器が搬入されたら、保健所に「開設届」を提出します。

その後、保健所の担当官がクリニックに来て、図面通りに作られているか、メジャーで寸法を測る「実地検査」が行われます。

ここで合格して初めて「開設届の副本(受理証)」がもらえます。

【1ヶ月前】保険医療機関指定申請(厚生局)(保険診療がある場合)

保健所の手続きが終わったら、次は「関東信越厚生局」などの地方厚生局へ申請を行います。

この締切日は厳格(例:毎月10日前後必着、毎月地域によって前後する)で、1日でも遅れると翌月1日からの保険診療開始に間に合いません。

これは1日でも遅れれば翌々月1日指定になりますので、自動的に1ヶ月保険診療開始が遅れます。大変危険です。

「内装ができればオープンできる」は大間違い!保健所・厚生局の「W審査」の恐怖

開業医の先生を悩ませるのが、「保健所」と「厚生局」という2つの役所の壁です。

建築基準法と医療法の違い。「手洗い」の位置ひとつで工事やり直し?

「内装業者はクリニックの実績があるから大丈夫だろう」

そう思っていませんか?

確かに彼らは建築のプロですが、管轄保健所ごとの「ローカルルール」まで熟知しているとは限りません。

  • 「診察室の手洗いはレバー式でなければならない(丸いハンドルは不可)」
  • 「待合室と診察室は完全に区画されていなければならない」
  • 「待合室や診察室の面積が足りない」
  • 「床材が不適切である」
  • 「手洗い設備が不適切である」
  • 「X線室の漏洩検査報告書の日付が合わない」
  • 「各室の表札がない」
  • 「カーテンやパーテーションではなく壁で仕切らなければならない」

などこれらは実際によくある指摘事項です。

これが実は各保健所により判断基準が異なります。前はOKと言われたなどというのは通じません。

実地検査の当日に「ここ、直さないと受理できません」と言われたら、その瞬間、予定していたオープン日は消滅し、工事のやり直しです。

1日でも遅れたらアウト。「遡及(そきゅう)申請」と保険診療の仕組み

通常、保険医療機関の指定は申請月の翌月1日に行われます。

しかし、これでは「開設日(保健所)」から「指定日(厚生局)」までの間にタイムラグができ、その間は保険診療ができません。

これを防ぐ特例が「遡及(そきゅう)申請」です。

遡及を使えば、開設日までさかのぼって保険診療が認められます。

しかし、この遡及措置を受けるためには、書類に一字一句のミスもなく、指定された締切日までに完璧に提出することが条件です。ただ、この遡求申請が認められるのは限定的で、要件を満たしている必要があります。

主に「医療機関の事業譲渡(承継)」「法人化」「移転」などの際に、患者さんに不利益(保険診療が受けられない空白期間)が生じないようにするために認められます。

以下に、厚生局(地方厚生局)で一般的に認められる要件を整理しました。

遡及申請が認められる主なケース

遡及が認められるのは、実質的に「診療が継続している」とみなされる場合です。

なので、完全に新規開設の場合は認められません。

主に以下の3つのパターンがあります。

① 開設者の変更(個人からの法人化)

個人診療所を「医療法人」化する場合(いわゆる「法人成り」)や、法人の合併などが該当します。

開設者が変わるだけで、診療は継続されるパターンです。

要件

前の開設者(個人)による廃止と、新しい開設者(法人)による開設が切れ目なく行われること。

② 開設者の変更(承継する場合)

親から子への事業承継や、第三者への譲渡などで開設者が変わる場合です。

これも前者のように開設者が変わるものの診療は継続されるパターンです。

要件

前院長から新院長へ、診療体制やカルテ、患者が引き継がれていること。

一般的には親族間の承継(一親等など)がスムーズですが、第三者承継でも要件を満たせば可能です。

③ 開設場所の移転(近隣である場合)

近隣への移転などで、一度廃止して別の場所で開設する場合です。

移転であっても実は旧診療所の廃止と、新診療所の開設となり、別の医療機関という扱いになります。

要件

移転先が旧診療所から近距離(一般的に2km以内程度とされることが多いですが、地域事情によります)であり、患者が継続して通院できると認められること。

認定されるための具体的要件(「継続性」の証明)

形式的な変更だけでなく、実態として医療機関が継続していると判断されるために、大まかには以下の点がチェックされます。

ローカルルールにより解釈が異なるので事前の確認が必要です。

  • 時間的な継続性: 旧医療機関の廃止日と、新医療機関の開設日が接続していること(空白期間がないこと)。
  • 診療の継続性: 旧医療機関の患者が、新医療機関でも継続して診療を受けられる体制にあること。
  • 資産・設備の承継: 建物、設備、医療機器、診療録(カルテ)などが引き継がれていること。
  • スタッフの継続性: 医師や看護師などのスタッフが、原則として継続して勤務していること。

手続き上の絶対条件(提出期限)

最も注意が必要なのが提出のタイミングです。

ここを誤ると遡及が認められず、保険診療ができない「空白期間」が生まれてしまいます。

  • 同時提出: 原則として、旧医療機関の「廃止届」と新医療機関の「指定申請書」を同時に(または同月内に)提出する必要があります。
  • 遡及願の提出: 指定申請書に加え、「遡及願(指定期日の遡及願い)」という書類を添付する必要があります。

⚠️ 注意

各地方厚生局によって締切日(毎月◯日必着など)が厳密に決まっています。

1日でも遅れると翌月指定(遡及不可)となるリスクが高いため、必ず管轄の厚生局に事前確認が必要です。

遡及が認められないケース(リスク)

以下のような場合は「新規指定」扱いとなり、遡及(空白期間なしでの移行)が認められない可能性があります。

  • 完全に別のクリニックになったとみなされる場合: 診療科目や診療体制が大幅に変わり、実質的な同一性がない場合。
  • 距離が離れすぎている場合: 移転において、既存の患者が通えないほど遠くへ移転した場合。目安は2km以内。
  • 空白期間がある場合: 改装工事などで長期間休診してから再開する場合(1ヶ月以上空くなど)。

初めての手続きで、自己判断でこのプレッシャーに耐えながら診療準備をするのは、精神衛生上おすすめできません。

万が一があればスタートから計画が頓挫します。

事前に専門家と関係各所と調整をしながら進めましょう。

「設計士や税理士に任せているから安心」という誤解が招く悲劇

よくある失敗パターンが、「誰かがやってくれていると思っていた」というケースです。

設計士さんは「建物のプロ」だが「医療法のプロ」ではない

設計士は、おしゃれで機能的なデザインを描くことは得意です。

しかし、彼らの仕事は図面を描くまで。行政への「届出書類の作成」や「保健所職員との折衝」は専門外です。

「図面は完璧でも、書類の記載内容と整合性が取れていない」という理由で窓口で突き返されることは日常茶飯事です。

税理士さんは「税務のプロ」だが「許認可のプロ」ではない

顧問税理士の先生は、開業後の税務においては頼れるパートナーで最も重要なブレーンの一人といえます。

しかし、行政手続き(許認可申請)の代理は、法律上「行政書士」の独占業務です。

税理士が善意でアドバイスをくれることはあっても、実際に保健所へ行って交渉したり、責任を持って書類を作成したりすることはできませんし、税務と許認可法務は別物です。

それぞれの専門家には、得意な領域とそうでない領域があります。

「建物は設計士」「税務は税理士」「許認可は行政書士」。

この役割分担を明確にすることが、リスクヘッジの基本です。

しかし、この行政書士の中でも専門分野は分かれています。

建設業専門、ビザ関係専門、自動車専門など。特に医療分野は規制が多く、医療法は専門性が高く熟知している行政書士はわずかです。

詳しい専門家を探し、事前に味方につけておきましょう。

私は医療許認可を専門に20年以上、1500件以上のご支援をしてきました。

建設業やその他の許認可のことは全く分かりませんが、医療のことであれば任せて下さい。

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開業医は経営者。行政手続きを「専門行政書士」に外注すべき3つの理由

先生の時間は有限です。そして、先生の時給は非常に高額です。

慣れない書類作成に何十時間も費やすことは、経営資源の無駄遣いと言えます。

理由①:数千万円の融資と家賃を守る「スケジュールの遵守」

私たちは、開業予定日から逆算した分刻みのスケジュールを作成します。

「いつまでに消防署へ行くか」「いつまでに医師免許のコピーが必要か」。

私たちがペースメーカーとなることで、先生は「何もしなくても手続きが進んでいく」状態を作れます。

これは、空家賃の発生を防ぐ最大の保険です。

理由②:行政窓口との「共通言語」によるスムーズな折衝

保健所の担当者も人間です。

プロの行政書士が相手だと「話が早い」と判断し、審査がスムーズに進む傾向があります。

また、理不尽な指導(法的根拠のない行政指導)を受けた際も、私たちは医療法や過去の判例を武器に、先生の利益を守るために交渉します。

理由③:開業後も続く「法務顧問」としての安心感

無事に開業した後も、医療法人は毎年の「事業報告書」が必要ですし、個人クリニックでも「病床設置」や「管理者変更」、「法人化」などの手続きが待っています。

医療広告ガイドラインも押さえておく必要があります。

開業時の事情を全て知っている行政書士が顧問についていれば、将来の展開もスムーズになります。

【FAQ】クリニック開業手続きに関するよくある質問

開業準備中の先生からよくいただく質問をまとめました。

Q1. 物件契約の「前」に行政書士に相談すべきですか?

はい、絶対にその方が良いです。

契約しようとしている物件が、実は「検査済証がない違法建築」でクリニックが開設できない物件だった、というケースがあります。

また、前述の「外来医師多数区域」の調査も必要です。契約のハンコを押す前にご相談いただければ、致命的なミスを防げます。

また、賃貸借契約書も保健所に提出します。医療法の観点でコンプライアンスチェックが必須です。

Q2. 自分(院長)で手続きを行うことは可能ですか?

法律上は可能ですが、おすすめはしません。

ご自身で行う場合、平日の日中に何度も保健所や厚生局へ足を運ぶ必要があります。

勤務医を続けながら、あるいは開業準備の合間を縫ってこれを行うのは物理的に困難です。

また、書類の不備で何度も窓口を往復するストレスは想像以上です。

また、コンプライアンスを完全に理解していれば良いのですが、抵触するようなことを口にしてしまうと疑義を持たれて難航します。

Q3. 自由診療のみ(美容クリニック)でも保健所への届出は必要ですか?

はい、必要です。

保険診療を行わない場合でも、医療法上の「診療所」であることに変わりはありません。

したがって、保健所への事前相談、開設届、実地検査は必須です。

厚生局への保険医療機関指定申請のみ不要となります。

まとめ:最高のスタートダッシュを切るために、法務のパートナーを

クリニックの開業は、ゴールではなくスタートです。

オープン初日から、システムトラブルもなく、スタッフも笑顔で、患者様を万全の体制で迎え入れる。

そのためには、院長先生が直前まで書類作成に追われ、疲弊していてはいけません。

面倒で複雑、かつ責任重大な行政手続きは、プロフェッショナルにお任せください。

先生には、先生にしかできない「理想の医療の追求」に専念していただきたいのです。

「この物件で本当に開業できるのか?」

「今のスケジュールで間に合うのか?」

少しでも不安を感じたら、まずは当事務所の無料相談をご利用ください。

医療専門の行政書士が、先生の開業プロジェクトを全力でサポートいたします。

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