クリニックの居抜き物件を活用するメリットと注意点
クリニック開業・経営
2025/5/8
2025/5/14

この記事の監修

行政書士法人RCJ法務総研 代表 / 行政書士
株式会社リアルコンテンツジャパン(経済産業省認定経営革新等支援機関) 代表取締役
古川 晃
医療許認可の専門家として17年、医療法人設立・分院開設・合併・解散・一般社団法人による診療所開設など医療許認可1500件以上 クリニック様の助成金・補助金・融資などの資金調達100億円以上の支援実績
居抜き物件とは?クリニック経営者にとっての魅力
「居抜き物件」は、前の事業者が使用していた内装や設備をそのまま残した状態で賃貸や売買に出される物件を指します。
美容クリニックや整形外科、皮膚科、内科などを新規に開設する医師にとって、初期費用を抑えながらスピーディに開業できる手段として注目されています。
このような検索ニーズが多いことからも、居抜きの需要の高さは伺えます。
検索ニーズの高いキーワード例:
- クリニック 居抜き
- 医院 開業 物件
- 医療モール 居抜き 活用
- 医療 居抜き 行政手続き
物件探しの段階で「居抜き」という選択肢を検討することで、コストだけでなく、時間的な負担も大きく軽減できます。
しかし、その一方で見落としがちな行政手続きの壁が存在するのです。
居抜き物件活用のメリットとデメリット
居抜き物件を活用するメリットとデメリットをそれぞれ紹介します。
メリット
- 初期投資の削減:内装や医療機器の再利用により設備投資を最小限に。
- 開業までのスピード:スケルトン物件に比べ、工事期間が短く即開業が可能。
- 立地が良いケースが多い:既に集患実績のある物件も多く、リスクが低い。
デメリット
- 物件の状態や設備の老朽化:見た目は綺麗でも、内部配管や電気系統に不具合があるケースも。
- 前テナントの評判が残る可能性:過去の経営不振がマイナスイメージになる場合も。
- なぜ閉院したのか、本当の理由が言われないこともある
- 許認可の要件を満たさない可能性:物件が医療機関としての基準を満たしていないことがあり、手続きや改修工事時間がかかることも。
特に、エステサロンの居抜きを使おうとする方も多く、エステサロンは許認可不要で自由に行えるものなので、診療所の要件を満たしていないことが多いです。
また、クリニックの居抜きであっても、行う診療内容によって構造要件は異なります。
水回りや各部屋の構造や導線など、要件を満たさないこともよくあります。
特にこの「許認可の再取得」において、行政との交渉や調整が想定外の負担となる場合があります。
医療機関特有の許認可と行政手続き
医療法に基づき、クリニックを開設するには保健所や厚生局への届出、消防署への使用開始届など、さまざまな行政手続きが必要です。
特に以下の点に注意が必要です。
- 医療法に基づく開設届
- 診療所の構造基準の遵守(採光・換気・導線など)
- 消防法に基づく設備基準(設計会社が確認することも)
- 医療機器設置に関する基準(放射線機など)
- 再生医療等提供計画の届出(再生医療を行う場合)
- 保険医療機指定、施設基準・公費医療、オンライン資格確認(保険診療を行う場合)
- 医療法人の場合は都道府県の認可
- 一般社団法人の場合は各地域保健所への開設許可
など多岐に渡ります。
それぞれ行政手続上のスケジュールがありますし、漏れがあれば診療開始の遅延になります。
居抜き物件だからといって、以前の許認可がそのまま使えるとは限りません。
むしろ、構造変更が困難なことで、思わぬ追加工事が必要になるケースも少なくありません。
事前のチェックが肝要です。
トラブル事例に学ぶ、居抜き物件の落とし穴
居抜き物件における実際のトラブル事例をご紹介します。
事例①:開業予定日直前に保健所から構造基準NG
A医師は、前テナントが内科として使用していた物件をそのまま活用し、美容クリニックとしての開業を計画。
しかし、診療内容の変更により、待合室と処置室の導線に問題があると保健所から指摘を受け、開業が1ヶ月延期。設備変更で300万円の追加出費にと空家賃、人件費の損失を生じることに。
事例②:医療機器設置後に消防検査で不合格
B医師は、内装工事業者に任せて設備配置を進めたが、非常口の位置や電源容量が基準を満たしておらず、再工事に。
居抜き物件の図面を正確に読み解ける専門家がいなかったことが原因。
こうしたトラブルは、事前に行政手続きや法的要件を確認していれば防げたケースですが、実は意外と多いトラブルです。
行政書士に依頼することで得られる安心と成功
医療機関に特化した行政書士は、開業手続きにおける「目に見えないリスク」も含めて、事前に洗い出し、適切な助言や代行を行うことができます。
行政書士に依頼するメリット
- 物件選定時からの助言:許認可が取りやすい物件かを判断。
- 保健所・厚生局とのスムーズな調整:書類作成・同行・交渉を代行。
- 法改正への対応:医療法・建築基準法・消防法などの最新情報に基づくサポート。
- 分院開設や法人化などの中長期戦略にも対応
専門家を味方につけないリスク
- 開業延期による損失(家賃・人件費・広告費)
- 無許可営業による行政処分や罰則
- 追加工事・再申請によるコスト増
「物件があるのに開業できない」―これは経営者にとって最も避けたい事態です。
6. まとめ:専門家を味方につけて、リスクをチャンスに変える
居抜き物件を活用したクリニック開設は、確かに効率的でコストパフォーマンスに優れた選択肢です。
しかし、医療業界特有の複雑な行政手続きや許認可を甘く見ると、大きな代償を払うことにもなりかねません。
開業を成功させるには、「不動産」や「内装工事」だけでなく、「法的・行政的な目線」も必要です。
医療専門の行政書士を味方につけることで、リスクを最小限に抑え、安心して開業に専念できる体制を整えましょう。
行政手続きでお困りの方、物件選定段階からのサポートをご希望の方は、ぜひお気軽にご相談ください。
医療法人の設立・運営面についてサポートします!
医療許認可の専門家として17年。医療許認可1,500件以上の実績。
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分院開設、医療法務顧問、補助金、助成金支援までサポートしております。
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