医療法人や一般社団法人が個人クリニック(診療所)を承継する場合の手続きやメリット・デメリットを解説!

クリニック開業

2025/2/8 2025/2/7

この記事の監修

古川 晃

行政書士法人RCJ法務総研 代表 / 行政書士 
株式会社リアルコンテンツジャパン(経済産業省認定経営革新等支援機関) 代表取締役

古川 晃

医療許認可の専門家として17年、医療法人設立・分院開設・合併・解散・一般社団法人による診療所開設など医療許認可1500件以上 クリニック様の助成金・補助金・融資などの資金調達100億円以上の支援実績

医療法人や一般社団法人で医業経営をしていると、時々、個人クリニックを継いでくれないか?という相談があったりします。

開設・管理者の先生がご高齢で引退を考えてらっしゃったり、ご体調不良でクリニックを売却したいなど理由は様々です。

そこには、既存の患者さんや従業員もいらっしゃるので、突然廃止というのはしづらいものです。

そんな時、どのように引き継ぐのか、メリットやデメリットは? 今回はそんなテーマで解説します。

 医療法人や一般社団法人が個人クリニック(診療所)を承継するとは?

個人クリニック(診療所)を運営する医師が、引退や経営の合理化を目的として、医療法人や一般社団法人にクリニックを引き継ぐことを「承継」といいます。

承継には主に以下の方法があります。

 1. 事業譲渡

個人クリニックの資産や診療機能を医療法人や一般社団法人に売却する形で承継する方法です。

メリット

  • 医療法人は資産のみを取得でき、不要な負債や役務を引き継ぐリスクが少ない
  • 必要な資産のみを譲受できる

デメリット

  • 事業譲渡に伴い、患者やスタッフとの契約を再締結する必要がある
  • 内容よっては税金が発生する場合があるので事前にチェックが必要

 

医療法人や一般社団法人が個人クリニック(診療所)を引き継ぐメリット

医療法人や一般社団法人側のメリット

  1. 既存の患者基盤を活用できる:開業と同時に患者を確保できるため、経営が安定しやすい
  2. 医療スタッフを確保できる:既存スタッフが継続勤務することで、人材採用の手間を省ける
  3. 新規開業よりもコストを抑えられる: 新たに医療機器を購入する必要がないため、設備投資を削減できる

 

個人クリニック側のメリット

  1. 後継者不在の解決策となる:後継者がいない場合、医療法人に承継することでクリニックを存続できる
  2. 譲渡収入を得られる:医療法人に対して適正な価格で譲渡することで、退職後の資金を確保できる
  3. 従業員の雇用が維持される:医療法人が事業を継続するため、従業員が引き続き勤務できる

 

クリニック(診療所)の承継をするデメリット

医療法人や一般社団法人側のデメリット

  1. 譲受後の経営リスク: 既存の患者数が減少した場合、期待した収益を得られない可能性がある
  2. 既存スタッフとの調整が必要:労働条件の変更により、スタッフのモチベーション低下や退職リスクがある
  3. 施設や医療機器の老朽化リスク: 事前に設備の状態を確認しないと、想定以上の修繕費がかかる可能性がある
  4. 各種法令や行政手続きをチェックしながら進めないと、許認可が得られず難航することがある:通常、そのコストは承継する法人側が持つことが多い。

 

個人クリニック側のデメリット

  1. 譲渡価格の折り合いが難しい: 医療法人と売却価格の交渉が難航する可能性がある
  2. 譲渡後の関与が制限される:承継後は経営に関与できなくなるため、理念が引き継がれない場合がある
  3. 譲渡時の税金負担が発生: 譲渡益に対する税金が発生する可能性がある

 

医療法人や一般社団法人が個人クリニック(診療所)を承継する場合の手順

1. 事前準備

  • クリニックの財務状況や資産・負債を整理する
  • 承継方法(事業譲渡または法人化)を決定する

2. 承継先の選定

  • 医療法人とのマッチングを行い、交渉を開始する

3. 基本合意の締結

  • 買収価格や条件を定めた基本合意書を締結する

 

4. デューデリジェンス(精査)

  • 法務・財務・労務面の精査を行い、リスクを洗い出す
  • 許認可、行政手続きを特にチェックすること

 

5.契約締結・承継手続き

  • 事業譲渡契約または出資持分譲渡契約を締結し、正式に承継を実施

 

6. 引き継ぎと運営開始

  • 事業の引き継ぎを行い、法人としての運営を開始する

医療法人や一般社団法人が個人クリニック(診療所)を承継する場合の注意点

1. 契約内容の明確化

  • 買収後の責任範囲や引き継ぎ事項を明確にしておく
  • 目に見えないリスクがないか、予想外の負債や役務が残っていないかなどもチェックする

 

2. 患者・スタッフへの周知

  • スムーズな引き継ぎのため、適切に情報を共有する

 

3. 行政手続きの確認

  • 都道府県、保健所や厚生労働省など行政手続を適切に行う
  • 許認可が絡むことなので、一つ一つ漏れなくチェックをしていかないと、難航する

まとめ

個人クリニックの承継は、医療法人や一般社団法人、個人クリニック双方にメリットがある一方で、慎重な手続きが求められます。

特に許認可が絡むことで勝手に進めることはできませんから、事前に行政手続きを確認し、税金や契約の注意点を踏まえて進めることが成功の鍵となります。

専門家と連携しながら、円滑な承継を目指しましょう。

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